でっきぶらし(News Paper)

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205号(2012年04月)5ページ

≪病院だより≫さよならチャチャ

 今年の冬は寒かったようで、当園の動物達も結構堪えた様です。
 ある寒い日の朝、ふれあい動物園にいるヤギのメスのチャチャが立てないという知らせを受けました。急いでふれあい動物園に行くと、チャチャは立ち上がることが出来ずに、ぐったりと横たわっていました。体が冷え切って、衰弱してしまったようなので、緊急入院させました。
 まず冷えた体を温めようと、入院室全体を暖房で暖め、ペットヒーターの上に寝かせてやり、毛布をかけてやりました。そして失ってしまった水分などを補うために点滴を入れたり、心臓の動きが弱っていたので、注射などをしました。それに加えて、血液検査をして、足りないと思われるものなどの投薬を続けました。ぐったりした状態が徐々に改善され、何とか持ち直してきましたが、手足は動かすものの、立ち上がることは出来ないままでした。
 立てなくなってから数日すると、口元に食べ物を持って行ってあげると食べるようになってきました。段々と「メー、メー」と鳴くようになり、朝出勤すると食べ物を催促するようになりました。そのくせリンゴや野菜など美味しいものは食べますが、乾草を食べさせようとすると、「それはいらないよ」と動かす口を止めて、プイッと顔を背けてしまいます。状態は上向いて来ているようでしたが、まだ立ち上がることができません。ずっと立ちあがれないままだと脚の筋肉が衰えてしまうので、無理にでも立たせて、人間で言うリハビリをしなければなりません。人間なら嫌で辛くても、後々自分が困ることになるので頑張りますが、ヤギだとそうはいきません。
 暖かい部屋で食事は食べさせてくれるし、チャチャは入院室でリラックスして、何の不自由も感じていないようでした。
 しかし、リハビリを頑張って、立って歩けるようになって貰わなくてはと考え、麻袋で体を支えるハンモックを作りました。麻袋に四本の脚を通せるように穴を開けて、オシッコをしても濡れて汚れない様に切り込みをいれて、少しでも脚に力を入れてくれないかと、丁度脚の先が床につく位の高さにロープで天井から吊り下げました。
 こうして一日二時間くらいのリハビリを始めました。この頃は午前中に点滴、注射をして、午後にリハビリ、その合間に食事と言う一日でした。
 しかしリハビリの時間、最初は早く終わらせてくれよと言わんばかりに「メー、メー」と鳴いていますが、しばらくするとふてくされたようにぶら下がっているだけで、リハビリが終わり、床に降ろしてやると、今度は早く飯をくれと「メー、メー」と鳴きはじめる毎日が続きました。
 この間、現在のふれあい動物園担当者や今までの担当者がお見舞いに来てくれました。やがて、寝ている時間が長いので、一部床擦れが出来てしまい、擦れている患部を保護するようになりました。その後も餌は良く食べるものの、脚には全く力が入らず、ちょっともう立ち上がるのは無理かもしれないと考え始めました。
 入院生活が一ヶ月に達する頃、急にチャチャは亡くなりました。前日まで元気に鳴き、良く食べていたのですが、点滴や投薬だけでは必要なものを補いきれなかったのかもしれません。最期のお別れにもふれあい動物園の担当者や、以前担当した職員がきてくれました。元気に回復して貰うことは出来ませんでしたが、多くの人に見送って貰って、安らかに眠って欲しいと思います。

動物病院担当 金澤 裕司

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