でっきぶらし(News Paper)

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205号(2012年04月)6ページ

スポットガイドだより

≪1月22日 ライオン≫

 物凄く寒い1月22日・13:30、猛獣館299でライオンのスポットガイドを行いました。
 当園には、3頭のライオンが飼育されており、それぞれキング(♂11歳)マッチ(♀6歳)ムール(♀6歳)と名付けられています。以前のネコ科猛獣の飼育施設では、ライオンは♂1頭♀1頭の2頭展示でしたが、猛獣館299が完成してからは、この3頭展示を基本としています。
 さて・・・普通ならば、この3頭展示、当園の飼育施設の規模としては理想的なのですが、現実はなかなか厳しいものがあります。何故ならこのライオン達の中に、一筋縄ではいかない、こちらの思惑通りにならない曲者が存在するからです。
 そいつ(あえて、そいつ、と言いますが)の名はムール。
 まあ・・・一言で表現すれば変わり者。それも尋常では無いレベルの変わり者・・・とにかく、毎日の行動パターンや考えている事が殆ど判らない♀で・・・加えて、彼女自身がいわゆる空気が全然読めない個体でもあります。
 御家庭で動物と・・・それも有る程度の知能を持つ哺乳類と生活している方々なら、大体お分かり戴けると思いますが、日々、彼らに関わっていれば何となく彼らの行動パターンや考えている事が判ってくるものですし、彼らの方もこちらの所作を大まかに理解してくれるものですよね?・・・・・・この、何と言うか【阿吽の呼吸】の様なものが、ムールと言う個体にはほぼ無いのです。正直、その行動が、気味が悪くなるくらい理解し難い時があり、人間がこう感じるのですから、同じライオンはもっと感じる様で・・・・・・もう1頭の♀のマッチは困惑を通り越して、蓄積した敵意さえ持っている様子です。
 従って、♀同士は猛獣館が完成してからずっと♂のキングと一緒にライオン舎で生活しているのに、未だに仲がとても悪く、だからこそなかなか完全な形での3頭展示が出来ません。
 例えば数日間、3頭一緒に放飼場に出し、小さな争いや揉め事があっても何とか展示が軌道に乗ってきたなあ・・・と思っていると、このムールがライオン達の関係性をブチ壊す・・・3頭とは言え群れとしての序列や色々な順番が存在し、それゆえ【群れ】と呼べるのですが、ムールにはこの為に必要な何かが欠落しており、全ての序列や順番を理解不能な行動で台無しにするのです。
 それゆえ、マッチの方は我慢の限界を越えてしまい、ついに大きな争いを生む結果に成り、3頭展示がまた駄目になる・・・・・・この繰り返しです。ちなみに、ムールと対比する形になってしまいますが、このマッチは大変賢く、私達の言う事も概ね理解してくれ、しかも非常に温厚な性格であり、更にあくまで人間側の主観ですが【美ライオン】で、殆ど非の打ち所が無い個体です。♂のキングも、観察していると明らかにマッチの方が大好きな様子で、それがより♀2頭の闘争を根深いものにしているのでしょう。
 ・・・今回のスポットガイドは、結果として、ライオンと言う動物の解説をするのと同時に、この♀2頭の確執を皆さんに説明しなければならず、やり難いのかやり易いのか判らない奇妙なガイドになり、また、ガイドの終盤、室内展示室にライオンを1頭誘導し、餌の採食風景を御覧いただきましたが、この時、ムシャムシャ肉に食らい付いていたのが問題児、ムールでした。ムール・・・御飯を食べている時【だけ】・・・少し可愛い様な気がします。

≪2月19日 ゴマフアザラシ≫

 2月19日・13:30より、猛縦館299の1階でゴマフアザラシのZOOスポットガイドを開催しました。
 ゴマフアザラシと聞くと、漠然としていて姿を想像できない方の為に・・・昔、ちょっと流行った某アニメに登場する【ゴマちゃん】をご存知の方、それを思い浮かべて下さい。
 ただし念の為・・・【ゴマちゃん】は真っ白な体色のキャラクターでしたが、当園の3頭のゴマフアザラシは、やや明るめのグレー系素地に黒い斑点がたくさん散りばめられた体色をしています。・・・と、お話しすると『何だ、ゴマちゃんじゃないじゃん!』と反論されるでしょう。でも、実はこれが間違ってはいないのです。
 何故ならばゴマフアザラシの多くは、生後数週間だけ、フワフワした真っ白い毛で全身を覆っているからです。これは流氷上で過ごす事が多い彼らの、言わば保護色で、生まれて間もない赤ん坊が白い氷の上で白い体色をしている事により、捕食者から見つかりにくくなる為のものです。
 さて、当園の3頭のゴマフアザラシ、それぞれ、ソラ(♂)・ソウヤ(♂)・シズ(♀)と名付けられています。今年の3月現在で、生後7歳・4歳・4歳、名前の由来は、ソラは生まれた日が快晴(青空)だったから・・・ソウヤは稚内市の宗谷岬から・・・シズは静岡市にちなんでいます。ちなみにソラは旭川市旭山動物園で初めて繁殖した個体で、ソウヤとシズは稚内市立ノシャップ寒流水族館で誕生しました。
 当然のごとく、1頭1頭個性があり、例えば?ソラは潜って泳ぐ時に独特なドングリ眼になってしまうのに対し、他の2頭は細目で泳ぐ?給餌の際、ソラとシズは担当者の近くにやって来るのに、ソウヤは離れた場所から餌を投げてもらうのを待つ?ソウヤとシズは潜水中に回転する時、常にバク転(背面回転)なのに、ソラは前回転する等々・・・です。来園者の皆さんからは、一見して3頭同じ様な感じに思えるかも知れませんが、少し挙げただけでもこれだけ個性があり、もちろん外見的特徴も皆違い、それはゴマフアザラシ展示ブースの各所に説明が掲示されています。今回のスポットガイドでは、こうした各個体の解説や、ゴマフアザラシが自然界でどんな生活を送っているか等、担当者から詳しい解説がされた後、猛獣館299の地下(半地下)にある機械室へ皆さんを誘導、そこで299の各大水槽で使用されている【水】を管理する施設を御覧いただきました。
 日本平動物園では、園内から湧出する地下水を各所で使っていますが、299ではこの地下水に含まれる不純物を特殊なろ過装置を用いる事により除去し、更に水を消毒してから何度も循環させています。貴重な水を無駄使いしない事は当然ですが、何よりも動物達の健康維持を考え、このスタンスをとっているのです。
 このシステムに必要な、何機もの大きな大きなろ過タンクや様々な機械類・縦横に走る配管を目の前にして、スポットガイド参加者の皆さんは、かなり驚かれていた様子でした。
猛獣館299の地下(半地下)に存在する、地上部や上階の動物達から喚起されるであろう【野生】とは正反対の?科学技術の集合体。
正に・・・・・・縁の下の力持ち、ですね。

ZOOスポットガイド班 長谷川 裕

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