208号(2012年10月)1ページ
これぞ「松上の鶴」?
前号のでっきぶらしで、ツチブタ、サイチョウ、レッサーパンダの3種類の動物達が来園したことをお知らせしました。その後、みんな新しい環境や仲間の動物ともなじんで来ているので、今頃は元気な姿を来園者の皆さまに見せていることと思います。
「猛獣館」、「ふれあい動物園」、「フライングメガドーム」、「は虫類館」と続いてきた動物園の再整備事業もいよいよクライマックスを迎えています。
動物園の正門を入った正面に建設工事中だった「レッサーパンダ館」、「ペンギン館」、「ビジターセンター」はこの秋オープンし、レッサーパンダのタクはシュウシュウ、シー、ミウとともに新しい施設で遊ぶ姿を披露しているでしょう。バックヤード棟に一時期“避暑”していたフンボルトペンギンもペンギン館に引っ越しです。新しいペンギンプールの中でどんな姿を見せてくれるでしょうか。
さらに新オランウータン舎、そのむかいに草食獣舎(バーバリシープ、アクシスジカ、ベネットアカクビワラビーが展示されます)が現在建設中です。
最後にこの秋からマレーバク舎が新築される予定です。旧バク舎が取り壊され、新しい施設の建設中は、マレーバク親子がペンギン達と入れ替わりでしばらくのあいだ仮住まいに入り、姿がみられなくなります。来春、再整備が終了して動物達みんなの顔ぶれが再びそろうのを楽しみにしていてください。
フライングメガドーム完成後、初めて鳥達の繁殖期を迎えたこの夏の間に、ショウジョウトキとクロトキのヒナが2羽ずつ育ちました。ショウジョウトキのヒナは一羽が巣から落ちてしまい人工育雛中ですが、成長すればフライングメガドームに戻される予定です。ショウジョウトキの巣立ちビナはまだ全身黒っぽく、二〜三年かけてだんだん赤くなっていきます。それに対してクロトキは巣立ったばかりでもほとんど親と同じで、首から頭が黒く、その他の体は真っ白な色をしています。よく見るとヒナでは首の黒い部分が少しまばらになっているくらいで成鳥とほとんど見分けがつきません。
さて、フライングメガドームの鳥達なかで、モモイロペリカンと並んで目を引く大型の鳥にホオジロカンムリヅルがいます。頭のてっぺんに金色の冠状の羽根が生えていてその名の由来になっています。生息地は東アフリカやアフリカ南部の湿地帯や草原です。フライングメガドームの中では、よく木の上に止っている姿を見ることができます。
「松上の鶴」はよく水墨画などの題材になっていますが、実は多くのツルの仲間は木の枝に止まりせん。草原や湿地の地上を生息地とするツルの仲間は足のうしろ側の指が短く、木の枝にうまく止れないのです。カンムリヅルの仲間は原始的な特徴を残している種類とされ、木に止まれる足を持っています。
松上の鶴といわれるのはもともと色や姿がタンチョウに似た、日本では絶滅してしまったコウノトリだといいます。実際、昔はコウノトリのことも混同してツルと呼んでいたようです。ただし、絵に描かれるときは松上の鶴はタンチョウの姿になってしまっていますが。
フライングメガドームのすぐ東門側にあるレストハウス前のケージにはタンチョウが飼育されています。ホオジロカンムリヅルの足先はなかなか近くで見られませんが、この二種類のツルの足を見くらべてみると違いがわかるかもしれません。
動物病院担当 菅野 展美