209号(2012年12月)2ページ
野生動物って素敵
私は、今年の4月から動物病院で主に鳥類の飼育を担当しています。動物病院には園内の病気やケガをした動物の治療を行うほかに、傷病鳥獣保護センターとしての役割もあり、多くの野生動物が保護され、持ち込まれてきています。
保護された鳥たちはケガをしている場合は病院で治療を行い、元気になると放鳥し野生に帰してあげています。
飼育の際に困難なことは、鳥の種類が異なれば餌や生活環境も異なることです。保護の多い日や病院に私一人の日は図鑑や過去の日誌を読みながら個性豊かな鳥たちと格闘しています。
また野生動物のため、人から与えられた餌を食べてくれない場合がほとんどです。そのため餌の種類や器、餌を置く位置などいろいろと工夫をしなくてはいけません。どんなに頑張っても食べてもらえない時は「お腹すいちゃうよー、元気になれないぞー」と頑なな鳥たちに向かって、ついつい独り言をつぶやいてしまいます。時には強制給餌といって、直接餌を口に入れて食べさせることもあります。新人の私にはまだまだ分からないことだらけで、先輩飼育員のみなさんからたくさんのアドバイスをいただき勉強しながら、毎日鳥たちの飼育技術の向上に励んでいます。
現在は猛禽類のハヤブサや水鳥のオオバンなどが保護され、野生復帰に向け準備を行っています。放鳥の瞬間はいつもドキドキです。ちゃんと飛べるかな、餌は取れるかな、仲間のところに戻れるかな、と心配な気持ちでいっぱいです。ですが、放した瞬間大空に飛び立つ鳥たちを見ると、心配していたことを忘れ、野生動物の力強さや美しさを感じます。
私がこの仕事を始め一番驚いたことは、県内に多くの野生動物が生息していることです。私が担当となってから今日までに約40種もの鳥類が保護で病院にやってきました。すべて静岡県内で保護された鳥たちです。春にはツバメやヒヨドリなどの雛が保護されたり、台風の翌日にはウミネコやオオミズナギドリなどの海鳥が風に流され海から遠く離れたところで保護されたりなど、季節や天候によって保護される鳥の種類は様々です。
また、なかなか目にすることのできないオオタカやフクロウなど肉食の猛禽類がやってくることもあります。このような動物たちが私たちの身近な環境で生活しているということにとても驚きました。たくさんの野生動物が暮らすことのできる環境をこれからも大切にしていきたいですね
みなさんの家の周りにもたくさんの野生動物が暮らしています。私は先日動物園内でジョウビタキという鳥を見つけました。ジョウビタキは冬鳥として日本全国に渡来する渡り鳥です。そのため、冬がだんだんと近づいて来たのだな、と季節の移り変わりを感じました。
野生動物は隠れるのがとっても得意です。近くの木々や川などにそっと目を向けてみてください。普段私たちが何気無く生活している中で見逃しているかもしれない彼らの姿を見つけることができるかもしれません。ぜひみなさんも一度、自然の中で生き生きと暮らす彼らを探してみてはいかがでしょうか。
動物病院担当 上野 詩歩