でっきぶらし(News Paper)

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234号(2017年02月)1ページ

インフルエンザと動物園、ときどきアイドル

「高病原性鳥インフルエンザ」―ほとんど何の前触れもなく鳥が突然死亡するウイルス性感染症。主としてシベリアや中国から日本に渡ってくる野鳥がウイルスを運び、ひとたび流行すれば養鶏業に甚大な被害をもたらします。この高病原性鳥インフルエンザ(以下「鳥インフル」)が、今シーズンは国内の動物園で立て続けに発生しました。
 発生した動物園では可能な限り鳥たちを隔離するなどの対応に追われ最終的には、感染が疑われる鳥を安楽死処分することもありました。内外への感染拡大を防ぐためにやむなく閉園した園もありました。冬休みに年末年始という例年ならお客さんがたくさん来てくれるはずの時期、なにより2017年は酉年だというのに、鳥を見せられない、お客さんに来てもらえないというのはとても残念で、辛いことだと思います。その後は徹底的に施設の消毒。白い防護服を着て消毒薬を散布する様子をニュースでご覧になった方もいるかと思います。
 日本平動物園でも、昨年12月から飼育している鳥たちを鳥インフルから守るためのアクションを開始しました。主なものを3つご紹介します。
① 防鳥ネットの設置…放飼場で飼育しているダチョウとペンギン、そして特に感染しやすいアヒルやウコッケイの飼育施設を、防鳥ネットでまるごとすっぽり覆いました。
② 鳥とのふれあいイベント休止…ペンギンの餌やり、ヒヨコとのふれあいをしばらくお休みさせていただきました。
③ 人間の消毒…人間が外からウイルスを持ち込む可能性を考えて、人間や車の通る場所に消毒マットや踏込み槽を置きました。また、手指の消毒用にアルコールスプレーも設置しました。
 鳥たちとのふれあいができなくなったり、姿が見えにくくなったりと、来園者のみなさまにはご不便、ご迷惑をおかけしてしまうことになりました。ですが鳥たちを、養鶏産業を、そして市民の健康を守るため(鳥インフルが人間に直接感染することは普通ありませんが)に、ご理解とご協力をお願いいたします。
 ところでこのインフルエンザウイルス、毎年のように新しいタイプが出現して流行しますが、そのウイルス変異の仕組みが特徴的です。
 インフルエンザウイルスの中にも人間と同じように遺伝子があるのですが、これが8本に分かれています。ウイルスは動物の細胞に侵入して、細胞の組織を材料に増殖していきますが、この時、同じ細胞の中に別のタイプのウイルスが感染していると、それぞれ8本ある遺伝子の何本かを交換して新しい8本の組み合わせを作るのです。この仕組みは「遺伝子再集合」と呼ばれ、例えば感染力は強いが病原性の低いタイプと、感染力は弱いが病原性の高いタイプが同じ細胞に感染したときに、感染力が強く病原性も高い新タイプができてしまうこともあるわけです。
 この仕組みを学校で習ったとき、私は人間の世界にも似た現象があることに気づきました。それは、アイドルグループで見られる「シャッフルユニット」です。いつもは別のグループで活動するメンバーが集まって、新しいグループを結成するアレです(当時は「モーニング娘。」などのハロプロ系グループが大流行でした)。
 「異なるグループ(ウイルス株)のメンバー(遺伝子)をシャッフル(遺伝子再集合)して、新しいグループ(ウイルス株)を作り、新たな流行(パンデミック)を引き起こす」
…ほら、なんだか似ていませんか?この流行メカニズムの類似性、まさか今話題のバイオミメティックか!…ってそんなこと考えてませんよねぇプロデューサーさんたちは。
かなり横道にそれましたが、この原稿が皆さんの元に届くころには、鳥インフルも収まっているのでしょうか。あるいは、当園でも…。
今はあらゆる場合を想定して、いざというときに備え、あとはそのいざという時が来ないことを祈るしかありません。                           
(動物病院係 山田大輔)

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