242号(2018年06月)4ページ
「ヤギじゃないよ、ヒツジだよ。仔ヒツジの初めての試練!」
ふれあい動物園では、4月に参加型イベントとして、お客様に4頭のヒツジの毛刈りを体験していただきました。バリカンの勢いでヒツジが怪我をする可能性があることから、獣医師も立ち会います。豪快な毛刈り術により多少の切り傷ができたものの、縫わなければいけないほどの傷にはならずに無事に終了。これからの暑い季節に備えて、ヒツジたちは暖かい毛を刈ってもらい、もこもこのヒツジのイメージからすると、とてもスリムになった感じがします。見た目のギャップと「メ―ッ」と鳴くことも後押しして、時々お隣にいるヤギと混同してしまう人もしばしば。「ヤギじゃないよ、ヒツジだよ~」と心の中で突っ込みながら、実はその後自分でも時々言い間違えてしまうことになるのでした。
毛刈りをして10日後、4月25日にヒツジのモモコに2頭の赤ちゃんが生まれました。お父さんはソンモです。モモコは3回目の出産でしたが、2頭の体の大きさに違いがあったので、小さい仔がミルクをしっかり飲めるか心配して観察しました。そうしているうちに翌日、今度はダイズが出産。ダイズは2回目の出産です。これまた小さめの仔1頭でした。この赤ちゃんのお父さんもソンモ。赤ちゃんは3頭揃ってメスでした。出産前はウールも含めてメス3頭で一緒の寝室に入っていましたが、続けて出産したので、育児室に2組の母子を移動し、一人ぼっちになったウールは少し寂しそうでした(数日後には仲間と再会できました)。
さて、ヒツジの赤ちゃんに生まれて間もなく訪れる試練…それは「手術」です。「えーっ、そんな小さい赤ちゃんに手術するなんてひどい!」という声が聞こえてきそうですが、ちゃんとした理由があります。手術する部位は、「しっぽ」です。生まれたばかりは長くて可愛い尻尾なのですが、ぶらーんとぶら下がっているため、少しするとうんちで汚れてきてしまいます。それがもこもこしたヒツジの毛に絡まり、ハエが寄ってきたりもして、とても不衛生な状態になってしまいます。牛のように尻尾を振って虫を追い払うことができれば良いのですが、ヒツジの尻尾はそこまで動きません。このため、ヒツジたちの健康管理の目的で、尻尾を短くする必要があるのです。
手術の日はちょうどGWで、動物園にはたくさんのお客様にお越しいただいている時でした。その日の午後、男性獣医師が一人、手術する仔ヒツジを抱きかかえて病院に向かう園路で、たくさんのお客様から「わーっ、かわいい!」と言われたとニコニコしながら戻ってきました。自分のことではないとわかってはいたものの嬉しかったようです。声をかけていただいた方ありがとうございました。手術は麻酔をかけて1時間程度で無事終了。短くなった尻尾は、それはそれでまた愛嬌のあるチャームポイントになった感じがします。
さて、ヒツジの仔も毛が短めで毛刈り後の母親と似て(毛刈りはしていませんが生後10日くらいなので)、行き交うお客様から「ヤギだ!」と何度も声がかかったそうです。かく言う私も、「今日のヤギはどうかな」などと数回間違えてしまったことを告白します。
尻尾の短い元気な仔ヒツジたちがスクスク成長するように、皆さんぜひ会いに来て応援してくださいね。
(松下 愛)