244号(2018年10月)1ページ
ピューマとアムールトラがやってきた!
7月上旬、猛獣館299に大きな動きがありました。南アフリカ共和国から若いピューマのペアが、そして和歌山県のアドベンチャーワールドからアムールトラのメスが来園しました。ピューマのペアは新規導入で、2歳のオスと1歳のメスです。この記事を書いている時点ではまだ名前が決まっていませんが、きっと素敵な名前が付くことでしょう。アムールトラは『ノゾミ』という7歳のメスで、精悍な顔つきの美トラです。
新しい仲間がやってきた事はとても嬉しいのですが、飼育員としては同時期に3頭の猛獣の馴致(環境に慣れさせること)をするのはなかなか大変でした。猛獣は人間のように引っ越しをして、新たな出会いに胸を躍らせたりはしません。警戒しています。当然ですよね。馴致の際に最初に苦労するのが展示場と寝室の移動です。部屋から出ない、出たは良いが今度は帰って来ない。馴致あるあるですね。
ピューマのオスはとても大人しい性格で、初日から移動が完璧でした。なかなかこんなに優秀な子はいないと思います。対照的にメスの方は、どんなに待っても頑なに部屋から出ようとしませんでした。目と鼻の先に餌があるのに擬岩の上でくつろいで、移動する気配がまるでありません。結局5日間待っても移動しないので、最後はやむなく水攻めを決行です。ホースから水を出して優しく追い立てると、なんとか移動してくれました。5日ぶりの餌にがっついたメスは、移動すれば餌がもらえることが分かったのか、それからは割とすぐに部屋の移動を覚えてくれました。
次はトラの話です。アムールトラのノゾミは、フジのお嫁さんとして来園しました。元々神経質な性格で、来園当初は誰に対しても激しく威嚇していました。威嚇の形相は凄まじく、ナナやフジがとても穏やかな性格なので、その違いにビックリです。ノゾミが吠えると隣の部屋のフジがビクッ!!とするのには少し笑ってしまいましたが、こんな調子では繁殖どころか同居すらままなりません。なんとか今ではそれなりに仲良くなってきたので一安心ですが、フジとノゾミの馴れ初めについてはまた別の機会に書かせてもらいます。
さてピューマのメスも頑固でしたが、ノゾミも相当に頑固だったという話をしましょう。ノゾミの警戒心は非常に強く、部屋の移動のために扉を開けても全く反応なしでした。しかし餌に対する執着は強そうです。通路におとりの肉を少量置いて部屋から出たところで扉を閉めるという作戦は・・・、人の気配がするうちは決して通路に出ようとしませんでした。こちらが少し目を離した隙に肉だけ食べて部屋で休んでいるのです。そんな騙し合いのようなやり取りを7日間続けて、やっと部屋を掃除できました。7日間掃除ができなかった部屋はひどい有様で、塩素消毒しても取れないシミが床に残ってしまいました(笑)
そんなこんなでバタバタしていた猛獣館ですが、ようやく落ち着いてきました。これからは同居を進めていく段階です。可愛い赤ちゃんをお披露目できるように、我々飼育員も頑張ります。皆さんもピューマのペアとアムールトラを優しく見守って下さいね!
(久保 暁)