でっきぶらし(News Paper)

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244号(2018年10月)5ページ

衰えは気付かぬうちに

 今年の夏は1946年の統計開始以降もっとも暑くなった年だそうですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。動物病院の獣医たちは毎日園内を巡回して回るため、みんないい具合にこんがりと焼けております。さて、今回はそんな私たちが普段仕事をしている、動物病院の中のお話です。
 お客様が普段目にする獣舎や展示場と違って、病院の中をのぞいたことがある方は少ないかと思いますが、院内には一般的な犬猫の動物病院と同じような設備がたくさんあります。入院室や薬品庫はもちろん、血液検査の機械や、体の中を見るためのレントゲン装置、超音波検査機器(通称エコー)、手術をするための麻酔器や、電気メス、滅菌機・・・などなど。この機械たちを使って病気を診断し、症状にあった治療をしていくのですが、その日は突然やってきました。
 ある日、クチバシの伸びすぎたキビタイボウシインコのクチバシを切ろうと、麻酔用のハコにインコを入れ、麻酔をかけ始めたのですが・・・寝ない。全然寝ない。最初はこの子が麻酔にかかりにくい個体なのかと思いましたが、ついにはハコの中でバッサバッサ羽ばたく元気さ。これはおかしいと、麻酔器についているホースから匂いをかいでも、麻酔特有の匂いがしません。あれ~?と首をひねりながら、麻酔量の確認をしたり、バルブをいじったりしていると、やっと麻酔が出てきました。その後、無事に処置を終えましたが、これはまさか故障か⁉という疑いがあったため、メーカーさんに連絡し、機械の確認に来てもらうことにしました。
 結果は見事にクロ。麻酔器のところどころに空気もれがあり、麻酔が効きにくくなっているそうで、担当者の方いわく「もう購入から12年もたってますからねー、13年過ぎると修理もできなくなっちゃいますからギリギリでしたね。」とのことでした。メーカーさんのご厚意により、現在はレンタル用のデモ機(最新型)をお借りして事なきを得ていますが、動物たちの健康を維持するためにも、一日も早く新しい麻酔器を準備せねば。
 この事件をきっかけに、病院内の機械を見直してみると、みんな結構お年を召していることに気が付きました。一番新しいエコーが購入して5年、古いものになると電気メスなどは購入後22年などなど・・・。電気メスはまだきちんと動きますが、メスの部分が壊れたら替えのパーツはない気がします。うーん、古い。そんなこんなで、現在動物病院では設備を更新するべく、業者さんとの相談が日々行われています。お値段を相談しながら、どこまでの機能をつけていくのか頭を悩ませていますが、実際新しい機械を使えると思うとちょっとワクワクしたりもします。
 もし今後、動物病院内に入れるイベントがたくさんあったりしたら、そこには獣医たちの「新しい機械を見せびらかしたい」という心が隠れているかもしれません。
(太田 智)

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