でっきぶらし(News Paper)

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248号(2019年06月)2ページ

ジュニアよ、たくましく育て! 

 2月26日、当園では約4年半ぶりにオオアリクイが繁殖しました。前回母親のヒナ(妃南)は、初産にもかかわらず当時の担当者とともに立派に仔を育て上げてくれました。今回も、落ち着いているようで、仔もしっかりとヒナの背中につかまっていたので、このまま無事に成育してくれればと思っていたのですが…。その願いもむなしく、3日目の朝、排水マスの金網の中で冷たくなり、もがいている仔を発見。病院へと緊急収容となってしまいました。原因としては、ヒナの乳がほとんど出ていなかった可能性が考えられます。翌日、産室を清掃すると仔のにおいが水で流されてしまったのか、ヒナが落ち着きをなくし、立ち上がって柵に肢をかけたり、ベニヤ板をかじってみたりと仔を必死に探しています。この光景を間近にしたときは、本当に心が引き裂かれる想いでした。ヒナ、ゴメン。
 病院に収容した仔は、冷たくなり弱っていましたが、様々な処置を施し、何とか一命をとりとめ、その後人工哺育になりました。始めの頃は哺乳もままならず、常に獣医師と二人での哺乳であり、時にはカテーテル(細いビニールの管)を使い、胃に直接ミルクを流し込んだりと、危険な時が何度かありました。それでも1つひとつそれらを乗り越え、日に日に元気になっていく姿にこの子の生命力の強さを肌で感じました。しばらくしてから、この子にとりあえず「ジュニア」という呼び名を付けました。人工哺育を始めた当初より、何とかして「いずれはヒナの元へジュニアを返せるようにしたい」とずっと心の中で思いながら成長を見つめてきましたが、ヒナと別れてしまってから50日後、2頭を同居させるという決断にいたりました。柵越しに慎重にお見合いさせ、扉を開けフリーにします。ヒナがジュニアを攻撃しないだろうか?ドキドキハラハラしながら見守る中、ジュニアが不安げな声をあげると、ヒナが駆け寄り見事に背中に乗せてくれました。ところがしばらくして、違和感から来るものなのか、ジュニアを背中から振り落としてしまったのです。ジュニアも、振り落とされまいと必死にしがみついていたのですが、ヒナが床に転がったりと激しく抵抗し、ジュニアは無残にも飛ばされてしまいました。慌てて中に割って入り、ジュニアを救出。幸いにもジュニアにケガはありませんでした。この日以来、よくよく考えました。もうヒナは残念ながらジュニアを自分の仔と認識していないようです。ジュニアもヒナを怖がっているようです。本来よくないことですが、もう自分がジュニアの親代わりになって大きく成長するまで見守っていこうと心の中で気持ちが変化してきました。オオアリクイは、飼育園館が4園14頭の希少種です。ジュニアよ、たくましく育て!!

(飼育係 松永亨)

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