でっきぶらし(News Paper)

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80号(1991年03月)4ページ

動物病院だより

 新緑がまぶしい季節となってきましたが、皆さん、お変わりありませんか?
 今年のゴールデンウィークは、天候に恵まれ連日大にぎわいでした。そんな中、四月二十九日午後九時十五分、チンパンジーのデイジーがオスを出産しました。デイジーは三年前の四月三十日にオスを出産していて、なんとこの時と交尾日が同じでした。一応予定日を四月二十五日とし、二十二日より、午後十一時に一度様子を見に来ていました。
 デイジーは、今までに三回出産していますが、一回は死産、二回は出産してもめんどうを見ない為、人工哺育を行なってきました。
 チンパンジー舎には、デイジーの他にもう一頭のメスのパンジーがいます。パンジーは二年前にメスを出産し、彼女は自分の手元で大きくしてくれています。そんな中でのデイジーの妊娠となったわけで、ひょっとしたら子育てを学習してくれて、デイジーも育ててくれるのではと期待して出産を見守りました。
 四月二十九日午後十一時、「リーン」と電話のベルがなり、小野田飼育課員よリ出産の連絡が入り、さっそく動物園にかけつけました。
 観察用にとりつけたカメラがしっかり働いてくれ、デイジーの様子がテレビに写しだされていました。胸にだいていましたが、胎盤がついたままであった為、小野田飼育課員が入舎して臍帯をきりました。一応胸にだいているからとその日は、そのままにしておきました。
 翌日、朝から授乳確認をしようと、観察を始めたのですが、ずっと抱いていてくれず、床においてしまい、子はギャーギャーと泣きわめく始末。「あ〜あ、デイジー、またしてもダメ。」さっそく、人工哺育の支度をしに病院にかけもどった次第です。
 子は、順調に哺乳をしており、一日五回行なっています。類人猿舎にいますから会いに来て下さい。名前は「エディ」でーす。
 こういういい話ばかりですか、私達もうれしいのですが、そううまくはいきません。昨年五月にマレーバク舎が新しくなって、五頭の飼育をし始め、六月二日には一頭生まれ、繁殖基地にしたいとはりきっていました。それが、十二月頃から、クシャミ、鼻汁、咳と、感冒症状があらわれ、治療を開始しました。症状は、なかなか良くならず、とうとう三月五日に♂、四月十四日に♀が死亡と、最悪事態となってしまいました。
 投薬方法も、最初は手で注射をうつことができていましたが、徐々に警戒するようになり、手打ちができなくなってしまいました。
 そこで吹き矢で投薬することにしました。どういう方法で注射をするかといいますと、下記の絵をよーく見て下さい。斜線の部分に注射したい薬を入れます。そして注射針の穴をゴムでふさぎます。
 注射筒に針をセットして、弁と弁の間に空気を入れます。そしてパイプの中に入れ、ふきます。すると動物にあたった瞬間、ゴムがずれて空気が注射液を押し完了。
 マレーバクでは効く抗生物質を運びだし、薬を手配し、昼休みに投薬準備をして、午後に治療開始、新しく採用された高見飼育課員にとって、ずっと昼休み返上の状態が続いており、いつまで、この状態が続くんだろうと、二人でなげいています。
 季節は味方していてくれます。梅雨になるまえに、なんとか回復してくれるようにと祈っています。
 さて、今年度は、いいニュースがいっぱいありますように。

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