でっきぶらし(News Paper)

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263号(2021年12月)6ページ

やっかいな賢さ?

 「馬鹿」という言葉に「馬」という文字が使われているのが少し悲しいウマ・ポニー担当の飼育員です。日々多くの場面で活躍するウマやポニーを見て、おそらく頭が悪い動物だと思う方は少ないと思いますが、担当飼育員として言っておきましょう。彼らはとても頭の良い動物です。ここだけの話、あまりの賢さに時には扱いづらささえ感じるほどです。特に人の表情や態度、ちょっとした動作から人の感情などを読みとることに関しては、並外れた能力を持っています。今回はそんなウマ・ポニーの(少しやっかいな…?)頭の良さをご紹介します。

 現在、日本平動物園ではウマのレベッカとポニーのつくしとチェリーを飼育しています。今回は飼育員泣かせのレベッカのエピソードを紹介します。レベッカは約9年前に日本平動物園にきたオスのウマです。ウマと言ってもポニーとのミックスなのでサイズは比較的小柄で、サイズだけでみるとポニーに属します(ポニーとは体高147cm以下のウマの総称です)。それでもお客さんからは「大きいねぇ」という声がよく聞かれます。体は3頭の中で一番大きいレベッカですが、(ずる)賢さもピカイチです。例えば新人の飼育員が入ってくると、その人の身振り手振りやレベッカとの接し方で「こいつは新人だな」と理解し、言うことを聞かなかったり、反発したりします。しかし困り果てた新人が私を呼び、そこへ向かうと「あ、まずい。言うこと聞かないと怒られる」とでも思ったのか、途端に言うことを聞くようになるのです。「ほら、こんなにいい子にしているよ!」と言わんばかりの表情で見つめてきます。しかしここからがさらなるやっかいポイント。飼育員としては言うことを聞かないとどうしても叱りたくなりますが、ウマは叱られるのが嫌いで、一度嫌なことをされた暁にはそのことをなかなか忘れません。つまり言うことを聞かないからといって、叱ったり、怒鳴ったりするのは基本NG。とにかく褒めて伸ばし、じっくりと長い時間をかけて付き合っていく必要があります。ちょっとした人間の行動がウマにとっては不快感マックスで、それを機に嫌われる…なんてことも珍しくありません。しかもレベッカは叱られるのが嫌いなのに、イタズラ大好きという性格。やたらイタズラをしてくる割に叱られると、それに大反発したり、ビビリ散らしたりします。「なぜこの子はこんなに加減が難しいんだ…」と何度頭を抱えたことか(笑)

 それでも担当1年目の時より素直になり、私のことをよ~く観察している様子を見ると、少しずつ信頼関係が築けてきたのかなと感じます(いやむしろそうであってほしい…)。一癖も二癖もある賢さを持つからこそ、飼育しがいがあるというのもウマやポニーのもつ大きな魅力のひとつなのかもしれません。ぜひそんなレベッカに会いに、ふれあい動物園に足を運んでください。

(藤森 圭太郎リカルド)

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