でっきぶらし(News Paper)

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274号(2023年10月)6ページ

マニアックなお仕事

 今回の病院だよりは、人事異動で3年ぶりに日本平動物園に戻ってきた、少しお疲れな獣医師が書いています。なぜお疲れかというと、私は3年間保健所にいたのですが、3年前というと世界中で新型コロナウイルスが流行し始めて、某クルーズ船の騒ぎの後、緊急事態宣言で学校が休校になったり、飲食店がお休みしたりとか…。そう、私は流行し始めから5類に下がる直前までドンピシャで保健所で働いていたラッキー(?)な職員なのです。その時保健所にいた者はみな、保健師や薬剤師はもちろん、事務職員も獣医師も栄養士までも新型コロナウイルス対応一色でした。

 そもそも動物園の獣医師が人事異動って…と思うかもしれませんが、わが日本平動物園は静岡市役所の部署の1つなので、役所内で異動があるのです。全国の動物園は、主に公立動物園と民間動物園の2つに大きく分かれます。しかし、最近では公立でも委託する園が増えて、ほとんどの飼育員や獣医師が公務員ではない園も多くあります(T都とかY市とか)。ちなみに、獣医師のいない園もありますが、多くの園には獣医師が1~5人(平均2~3人)ぐらいいることが多いです。数えたことはないので正確ではありませんが、全国で動物園の獣医師の数は約200人超くらいでしょうか。

実は、日本の獣医師(獣医師免許を持っている人)は、法律で、二年一度今どんな仕事をしているのか国に報告する義務があり、それによって獣医師の人数もわかります。今は約4万人の獣医師が国内にいますが、その中で一番多いのが犬猫病院の獣医師でざっくりと40%ぐらい、家畜の獣医師が5%ぐらい、公務員は25%ぐらい、民間企業(製薬会社、農協、競馬会、民間動物園など)で働いている獣医師は20%ぐらいいます。あとの10%は、特に獣医師として働いていない人です。全国に17あるいずれかの大学の獣医学科を卒業して、毎年1000人超の獣医師が生み出されて少しずつ増えていますが、最近は犬猫病院で働く獣医師の割合が増え、特に公務員は減っています。

今回の病院だよりは、動物の話が一切出てこない一部のマニア向けの話になってしまいました。そもそも日本の獣医師(約4万人)は、医師(約34万人)や薬剤師(32万人)に比べて少数民族なのですが、その中でも動物園の獣医師は全国の獣医師の中の200分の1ぐらいしかいない希少な職業なのです。獣医師を目指す学生さん、よかったら将来、この絶滅危惧種のようなマニアックな仕事に就いてみませんか?

塩野 正義

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