277号(2024年04月)6ページ
動物園施設と災害
はじめまして、今年度より施設係長になりました市川と申します。動物園には、小学1年生の時、6年生の相棒のお兄さんと手をつなぎ、遠足で伝馬町小学校からてくてく歩いてやってきた楽しい場所という思い出が強く残っています。そんな動物園に配属されたからには、来園者の皆さんにも、ぜひ楽しい思い出を持って帰れる場所にしたいと思いながら日々仕事をしています。
私たち施設係は、来園者が見やすく、動物が過ごしやすい獣舎を整備するといったような、動物園をより良くする仕事をしています。その一方で、楽しくない思い出をつくらないためにも、ボロボロのベンチを直したり、壊れそうな機械の部品を交換して、故障を防いだりすることで、来園者の皆さんと動物たちが安心して過ごせる環境を保つ仕事もしています。
さて、このような仕事をしている私たち施設係にとって、ひいては動物園施設にとっての最大の敵は何だと思いますか?それは、題名にもなっているとおり、突然襲ってくる災害です。ベンチや機械はちゃんと管理していれば、古くなってきた、そろそろ壊れそうだと予想ができるので、計画を立てて順番に直したり、交換したりできますが、災害はいつ起きるか、どんなものが起きるか予想がしにくいため、予想外のものが倒れたり、壊れたりする可能性があります。当園でも、令和4年の台風15号の大雨により土砂災害が発生して施設に大きな被害を受けましたし、今年初めの能登半島地震では、のとじま水族館が大きな被害を受け、飼育が難しくなったため、他の動物園や水族館に動物を移動させたことはニュースにもなりました。
大きな自然の力に対抗するのに現実は色々と厳しいかも知れませんが、それでも災害を跳ね返せる動物園を理想として、施設係では、ゾウの「シャンティ」の骨格標本などの大きな物を置く時には、地震や強風で倒れないように計算して十分な杭を打ち込んだり、火事への対策として消防署と協力して消火避難訓練を実施したり、地震などで大停電が起こった時に使う非常用発電機がちゃんと非常時に使えるように点検したりと、実際に災害が起きた時にも来園者の皆さんと動物たちの安全が図れるよう、日々備え、奮闘しています。
動物園の職員の中でも、特に皆さんと園内でお会いすることが少ない係ですが、動物園にはこんな裏方もあるだなぁと知っていただければ、幸いです。
市川 敬浩