278号(2024年06月)5ページ
アクシスジカの夫婦
皆さんこんにちは!今回はあまりスポットライトが当たっていないアクシスジカについてお話しようと思います。アクシスジカは体長135~150cm、体重25~75kg、インド・スリランカ・ネパールなどの東南アジアに生息するシカの仲間です。白い斑点模様が一年中消えないことが有名な世界一美しいシカと言われています。皆さんが想像する奈良のシカなどはニホンジカと呼ばれ、夏はアクシスジカと同じように白い斑点模様がありますが、冬には斑点模様が消えて灰色っぽい色になります。この斑点模様は夏場の強い日差しで森に入る木漏れ日に体が同化する擬態の役割を果たしていて、5~7月頃に生まれる小鹿たちもこの斑点模様を持って生まれてきます。そして、親が近くにいないときには天敵に見つからないように、草陰でじっとしていることで自分の身を守っているようです。
当園にいるアクシスジカはメス(16歳)、オス(15歳)の2頭です。私は8年前から副担当としてアクシスジカの飼育を始めました。3年前に正担当になった時に名前を付けようと思ったのですが、10年以上名前がついていなかったので、色々、色々考えすぎて勇気が出なくていまだにつけられていません…。そのため、ここではオス、メスとさせてください。
アクシスジカの寿命は野生下では8~14年、飼育下では15年~20年といわれています。しかし20歳のアクシスジカなんて、めったにいないくらいのご長寿です。(人間にすると100歳以上かも)。そのため、うちの子たちは人間にすると大体、60~70代くらいかなと思っています。しかし、年齢を感じないくらい毛艶などがとても若々しく、来園者の方にも「おじいちゃんやおばあちゃんに見えなーい」といつもほめていただけるので担当者としては自慢の子たちです!シカは顔で人を見分けることができるらしく、私と背格好が似ている飼育員がいると走って寄って行きますが、顔を見て違うとわかると逃げていくそうです。それでも副担当になった8年前は最初警戒されていましたが、警戒心は徐々になくなっていきました。
オスはとても人懐っこい性格です。何なら、ごはんを食べるために近づいてきて、角が私の顔に当たりそうになっても気にしません。掃除のときも、回収するために集めた乾草の上にドンと座り込んで、「ねぇねぇ」と声をかけても無視!優しくつついてやっと起き上がって移動してくれる始末です。さらに、オスが座り込んでいる場所の目の前のうんちを掃除している時、体にほうきが当たっても迷惑そうにするだけで、全く起き上がってくれなかったりと慣れた人であれば警戒心はほとんどないのです。一方、メスはとても警戒心が強く、いまだに私でさえ近づくと嫌がられます。それでもある程度は近づくことができるのですが、手で餌をもらう時は腰が引けているのがわかります。来園者の方に餌をあげていただくイベントの時もオスは食べることができますが、メスは怖がって食べることができないのでオスが全部食べてしまいます。
そんな風に性格が違う2頭ですが、シンクロして座っていたり、くっついていたりととても仲良しです。親バカ?(飼育員バカ?)ですが、仲良くしている姿や顔がすっごくかわいい2頭です!まだまだ元気で、餌もモリモリ食べてくれているのでこれからも2頭仲良く健康に長生きしてほしいと思います。
(井上)