51号(1986年05月)8ページ
動物園の一年(後編)◎三月 春の兆しを示す出産、小獣舎完成他
冷たい風の中にもややぬくもりが感じられ、日差しも日毎に暖かみを増してゆく。それが三月でしょうか。動物も、そんな春の兆しに敏感に反応します。
冬場、ボツボツだった出産が、彩を見せ始めることです。家畜や季節感なく生まれるフルーツコウモリの出産を除いても、ワオキツネザル、エリマキキツネザル、アクシスジカの出産が見られました。
春の心地よさをより誘うように、いずれも仲睦まじい母子の姿を披露。まあ、エリマキキツネザルだって二度目。後の二種類はベテランの母親です。当然といえば当然かもしれません。
子供動物園において、数ヶ月に渡って続いていた小獣舎の建設工事が終了して、ミーアキャットが引っ越し、プレーリードッグが新たに展示されました。
小さな動物ですが、程よい距離で見られ、温かみを感じさせます。ミーアキャット同様、ちょこんと二本足で立って周囲を見渡す愛らしい仕草は、きっと人気を呼ぶことでしょう。何たってリスの仲間、可愛らしさは格別です。
他、先(五月八日)に生まれたエリマキキツネザルの子が横浜市野毛山動物園へ返却されました。繁殖の為に動物を貸したり借りたりすることが多い昨今、これからもこんなことが度々あるでしょう。
東京都井の頭公園へは、日本産動物の展示コーナーが新たに設けられたということで、保護されていた野鳥の多くが寄贈されました。行き場を失っていた彼らですが、単に安住の場になるのではなく、より詳しく紹介する場であって欲しいと思います。
以上、動物園の一年でした。ZOO日誌より主なものを抜粋、それに少し肉付けしただけに終わってしまいましたが、紙面に限りがある以上やむを得ないでしょうか。
(松下憲行)