でっきぶらし(News Paper)

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51号(1986年05月)13ページ

動物病院だより

ツツジが咲き、フジが咲いて動物園を訪れる人々にも、どこかしらウキウキ気分を感じる今日このごろですが、皆さんもハリキッていますか?
この季節は、園内の動物達にとってもウキウキ、そわそわの重要な時期となっています。そして、飼育をしている我々にとっても一番やりがいのある時期です。
まず、キジ舎やフライングケージをのぞいてみると、産卵が始まっています。担当の渡辺飼育課員は、いろいろな鳥達の卵を孵卵器に入れ、温度計、湿度計とのにらめっこの生活が始まるわけです。
彼にとって今一番恐れているのは停電!!当園はまたよく雷がおちるですヨ。停電するとすぐに発電機をまわし、孵卵器を作動させなければなりません。日中ならともかく、夜間、それも雷雨で長時間停電なんてことにでもなれば、もう最悪。発電機のガソリンは四時間しかもちませんから、途中で足さなければなりません。ねむたい目をこすり、こすり、誕生してくる雛の姿を思い浮かべ、もうがんばるしかないわけです。
渡辺飼育課員には、もうひとつうれしいことがあります。それは四月二十三日に、待ちに待ったタンチョウの産卵がみられたことです。このタンチョウは、オスが上野動物園、メスが多摩動物公園とブリーディングローン(繁殖を目的とした貸借契約)を結び、当園にお預かりしている大事な個体なのです。タンチョウの孵化日数は32日ですから、五月末におめでたいニュースが聞かれたら、もうバンザイ!!
有袋類の仲間では、パルマワラビーの袋からかわいい赤ちゃんが顔を出しています。この母親は白内障にかかり、かなり高齢になってきていますから、世代交代がうまくいってもらいたいものです。
小型サル舎では、エリマキキツネザル、ワオキツネザルの子供達がピョンピョンとびはねています。
ハ虫類館をのぞいてみると今年もフロリダキングスネークの産卵がみられています。しかし、担当の後藤飼育課員は手ばなしで喜んでいる様でもありません。なぜ?
「30頭も孵化したらどうする?一頭一頭別にしなけりゃ、共食いしちゃうけど、そんな部屋数ないんだ。それにピンクマウスもそう与えられないし・・・」と渋い顔。まったく自分の身体と同じぐらいの長さのものをのみこんでしまう仔ヘビにはまいります。
この他、ムネアカタマリン、ラクダ、アメリカバイソン、バーバリシープ、ホンシュウシカ等の出産が予定されています。またカリフォルニアアシカは、今年はどうでしょうか。
このように、今年の春もベビーラッシュで多くの親子のほほえましい姿を見る事ができます。
“明日は動物園に・・・”
(八木智子)

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