でっきぶらし(News Paper)

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51号(1986年05月)17ページ

動物の食べ物第四回◎フライングケージ

ツル、ガンカモ、コウノトリ類等の約20種の鳥達が、文字通り飛翔(フライング)できる状態で飼育されています。
ひときわトキ色が目立つショウジョウトキには、ドジョウやオキアミやアジの切り身を主体に、カンムリヅルやアネハヅルには穀類やアジの切り身を、ガンカモ類にはアオナを細かく刻んで配合飼料を混ぜたのを与えていますが・・・。
雑居飼いの中で自由気ままにあっちこっちにうろつき回っている彼ら。与える側の思惑通りに食べている筈がありません。それぐらい雑食性が強くて悪食なのです。
金魚のいる池にアヒルを放したら、金魚をパクパク食べられちゃった、なんて経験はありませんか。アヒルは元々カモ、カモは水辺にある(いる)ものなら、たいていのものを食べてしまう雑食性の非常に強い鳥です。小魚なら食べてあたり前、食べないほうが不思議なぐらいです。ツル類にしても、やはりガンガモ類と変わらぬ幅広い食性を示します。
ちょっと変わり種は、最近、東京都多摩動物公園から頂いたブロンズトキ。人工飼料で育てられてきた為に、担当者を少々悩ませています。
頂く時には、自然食(ドジョウ、オキアミ等)でも大丈夫では?といわれたそうですが、最初は前園の通りにするほうが賢明というものでしょう。
という訳で、与えられているのは、馬肉と魚粉とを混ぜ合わせて固形状にした飼料。もっとも、これだって何処までブロンズトキが食べているのやら、先程も述べた通り悪食な鳥達が寄り集まった中で与えられているのですから―。
フライングケ−ジでは、これらの鳥類の他にウミネコやユリカモメ等のカモメ類が何度か飼育されたことがありました。しかし、いずれもその当時の担当者に“追放”の処分にあっています。
何故?より賑やかでいいではないかとは外部の者の考えで、彼らは春の繁殖には「ギャング」と化してしまうからです。ガンカモ類がせっせと産卵した、あるいは孵化させた雛を「うまそうだ、ごちそうだ!!」と狙われては、ガンカモ類にとっても、担当者にとっても、たまったものではありません。
生き物と生き物は、食う食われるの関係で結びついています。悪食だとこきおろしているガンカモ類も、他の動物からすれば食べられる存在です。だからといって、カモメの行為を放置する訳にはゆきません。せっかくの繁殖を台なしにしたのですから、“追放処分”もやむを得なかったでしょう。
それでなくとも、ちょくちょくドブネズミやアオダイショウが侵入、卵や雛を失敬することがあるのです。ついこの間も、卵が巣から転がったり減ったりしているので、どうもおかしいと思っていると、案の定、アオダイショウが侵入していました。
これは容易に捕らえられましたが、かつて担当者が苦労して捕らえたのは、ドブネズミ。巣穴を縦横に駈け巡らし、ほんぼうに暴れ回った時のことです。巣穴という巣穴をふさぎ、ただ、一ヶ所だけを開けておいて、そこから徹底的に水攻め。一時間や二時間じゃあ駄目。巣穴の中を水で一杯にするのに四時間以上もかかったといいます。
その時の苦労の介あって、今のところドブネズミの害は被っていません。えっ、捕らえられたネズミはどうしたって、食物連鎖の法曹ノ従ってコンドルに与えたところ、それはそれは、うまそうに食べました。

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