43号(1985年01月)8ページ
良母愚母 第三回(猛獣編)【ウンピョウ(愚母になってもいいから)】
現在、猛獣舎には六種類(クロヒョウも一種と数えて)のネコ類が飼育されています。この中で良母愚母の主題から外れてしまう動物がウンピョウです。
時折、発情が来て交尾した話は聞くのですが、それっきり。かなり以前にも出産するのではないか、と騒いだことがありましたが、結局飼育している側の想像妊娠でした。
こうしてウンピョウうんぬんを書いていますが、一般の方にはイメージの湧き辛い動物ではないでしょうか。珍獣かと言われれば、珍獣。非常に数の少ない動物です。雲の形をした美しい毛模様故に、かつてその毛皮を求めて乱獲されたそうです。その結果、減ってしまい、今では、保護運動の一つとなっています。だからこそ繁殖を願うのですが、世の中ままなりません。ライオン、ピューマに限らず、トラでさえ動物園では余り気味だと言われているのに、増えて、増えて、いくら増えてくれてもいい動物が、ペアで飼いながらその柱?がまったくないのですから、これ以上の皮肉はないでしょう。
ひっそりとして目立ちません。が、よく見れば、凄味の中に何とも言えぬ美しさを漂わせています。そんな美しい動物が、この地球から消えてしまうなんて、これ程悲しいやり切れない話はありません。産み捨てでもいいから、繁殖を願わずにはいられません。
(松下憲行)