でっきぶらし(News Paper)

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87号(1992年05月)2ページ

一九九二年 春の話題を追って【ヒツジの人工哺育】

 春と言うにはまだちょっと早い二月の下旬、ヒツジが出産しました。悪い言い方をすれば、他のいろんな動物が出産する中でだったら、恐らく完璧に無視されていたでしょう。
 まずは、黒と白の双児で生まれたことに興味を抱きました。家畜の持つ遺伝子の多彩さと言うか、白と白がかけ合わさって黒の毛の子が生まれるなんて、やはり「へa[っ」て感じになります。
 次に白の毛の子を巡っての騒動です。少し雨に打たれた為か、やや衰弱してきているのを心配した獣医は、その子を親より引き離してひと晩病院に置きました。
 親と子の絆って他愛なく、それでおしまいです。かってトラの親子に見られた、ひと夜の別れが永遠の別れを誘った悪夢が、今再びって訳です。家畜だし大丈夫との判断からひと晩離したのでしょうが、親はもう面倒を見ようとしなかったそうです。
 動物園の中だって、我身を犠牲にするぐらいの母性愛を示すケースもあれば、冷たく生み捨てるケース、このように人が介入してプッツンするケースなど、実に様々です。母子百景、それだからこそ又百面白いのですが―。
で、そのヒツジの子は飼育係の手によって育てられることに。こうなると、元々人懐っこい家畜はより人懐っこくなってしまいます。
 ピョンピョン飛び跳ねながら飼育係の後をついてゆく様子は、なかなか可愛いものです。誰よりも喜んだのはお客様でしょう。目の前で子ヒツジが戯れているのですから。
 家畜は、ややもすれば軽んじられ勝ちです。が、人を臆せず悠々と接する様を見ていると、彼らの果たしている役割の大きさを思わず考えさせられます。子供達の宝物にでも出会ったような顔、未だに脳裡より消えません。

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