でっきぶらし(News Paper)

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89号(1992年09月)6ページ

カメラが追う悲喜こもごも【ブラッザグェノン、撮っても撮っても】

 ブラッザグェノンの繁殖を仕掛け、効を奏して悦に入ったのはもう何年前でしょう。ほぼ毎年のペースで生み続けて十三頭も出産、懲りずに飽きずによく生み続けます。
 だもので、モンキー舎の前を通ると、その時カメラを持っていると、つい構えてしまうのです。同じようなシーンばかりを撮ってしまって駄作の山を築いてしまうのですが…。
 最初の不思議な光景は、二番目に生まれた子がちっとも大きくならず、三番目に生まれた子に一年余りで追いつかれ、追い越されてしまったことです。
 写真を見る限りでは、まるで双児が仲睦み合っているよう。不思議な光景として、写真よりもむしろ心に強く焼きついています。
 一時少し飽きがきて、再び彼らに強く感心を抱くようになってきたのは、七〜八頭の賑やかな家族を形成するようになってからです。とにかく動きが面白い。
 カメラを持ってじっと構えていると、そっと忍び寄ってくるのは、たいてい下から二番目か三番目の子です。ちょっと指を触ってやると、驚いて逃げますが、しばらくすると又そっと近づいてレンズを覗き込んできます。
 邪魔をされると腹が立つものですが、子供のやることは憎めません。それに、それはカメラに対する警戒心や意識がないと言うこと。カメラに飽きると、実にのびやかな表情で子供同士の遊びを繰り広げてくれます。
 姉妹同士の戯れをパチリ、母親の哺乳を妨げる子の姿をパチリ、それらを遠くで眺めているオス親の姿をパチリ、不遜にもそのオス親をからかう子の姿をパチリ、全くきりもなくパチリ、パチリです。
 そんな中で気に入った写真があります。出来映えはメッシュの影が薄く入り、ややピントも甘いのですが、止まり木の上に七〜八頭が固まっていかにも家族らしく肩を寄せ合っている写真です。滅多に見られぬシーンだけに、貴重な写真でもあります。

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