でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 90号の1ページへ90号の3ページへ »

90号(1992年11月)2ページ

チンパンジー 生と死

 昨年は猿年でした。日本平動物園でもジェフロイクモザルの誕生、シロガオサキの来園などサルに関する話題に事欠かない一年となりました。
 そんなサル年も去ろうとする十二月二十日にオスのチンパンジーが生まれました。お母さんのデイジーは今までに三回出産していましたが、子供はみんな人工哺育でした。今回もデイジーは子供を逆に抱いてみたり、置き去りにしたりと子育てがよくわからないようでしたので、翌二十一日の夕方に子供を取り上げて人工哺育に切り替えました。はじめは調子が悪く、ミルクも飲もうとせず、無理に胃に入れても消化できませんでした。しかしその後どんどん回復し、今ではとても勢いよく乳首に吸いつくようになっています。ミルクは朝七時から夜十一時の間に五回与えていますが、一回の哺乳量も目に見えて増えてきています。チンパンジーの赤ン坊は人間の赤ン坊にとてもよく似ていますが、首の座り方、手足の動かし方など体の成長度では明らかに人間よりも進んでいて、しっかりしています。体力的にもおそらくかなり上回っているのでしょう。まずは一つめの山を越えることができたというところです。ぜひこのまま順調に育ってほしいものです。
 さて、子供が生まれて一週間程たった十二月二十六日にそのお父さんであるポコとお母さんであるデイジーが相次いで他界しました。ポコは十二月中旬から何も食べず、寝てばかりいる毎日でした。オスで危険である為治療もままなりませんでした。二十六日に病状がますます進んだようでしたので麻酔をかけて治療を開始しましたが、衰弱が著しく治療中に死亡しました。死因は慢性肺気腫でした。デイジーは出産後食欲が減退し、徐々に元気を失っていきました。二十六日には立てなくなり、治療の甲斐もなくその夜遅くにポコの後を追いました。出産前からやや風邪気味でしたが出産により体力を消耗しその後冷えこんだことでいっきに衰弱したのでしょう。死因は急性肺炎でした。ポコは二十才、デイジーは二十一才、人間で言うとまだまだ働き盛りの年齢でした。しかも同じ日に二人も死んでしまい大変残念に思っています。今回生まれた子供はぜひ父母の分まで無事に大きく育ってほしいものです。(赤ン坊については「あらかると」の欄でより詳しく紹介されています。)
(高)

« 90号の1ページへ90号の3ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ