90号(1992年11月)9ページ
あらかると【ジーコ、大きくなあれ】
サル年に間もなくお別れになる十二月二十日、夜の九時頃にチンパンジーの赤ちゃんが生まれました。しかし、母親のデージーは今までに生んだ三頭の赤ちゃんの育児をいずれも放棄していた為に心配していたのですが、案の定面倒を見る気配はありませんでした。
担当者は粘りに粘り、ぎりぎりまでデージーにわずかな期待をかけました。そのデージー、中途半端な執着心を見せ、なかなか子を置いて離れようとはしませんでした。今回はあっさりとしていないのです。
麻酔を吹き矢でやっても薬が完全に入る前に抜き取ってしまってしっかり効かず、取り上げ失敗です。担当者が子をおいて獣舎を出るようにとの命令を出して何度か失敗した後、更にもう一度試みると、子に二、三度未練を残しながらも出てゆきました。
やっとの思いで子を取り上げて人工哺育に切り替えることができたのですが、体重は千六百四十gと今までの中で一番小さいほうでした。体が小さかったのと時が経ち過ぎて、体温の低下を起こした為に温水で温め、その後はフロアヒーターを入れたりして体温維持に努めました.
それでもまだミルクを吸おうとはしなかったので、カテーテルで胃内に直接ミルクを注入する方法で飲ませました。が、消化する力はまだなかった為に、点滴を行なって体力の回復を計りました。
その後、又カテーテルでミルクを少しずつ胃内に送り込むことをやっている内、次第に自力で吸う気が出てくるようになりました。体温も自分の力で維持できるようになりました。
一週間ぐらいより哺乳も順調に進むようになって、体重も増加。生後十四日目に千七百五十gと生まれた時の体重を上回り、ミルクも一日五回で二六十ccも飲むようになりました。
性別は、今までもオス、今回もオスでした。名前は、母親のデージー、父親のポコ、それぞれ後ろの文字を合わせ、ジーコと名付けました。
もう少し大きくなったら皆さんの前にお目見えするでしょう。その時は可愛がってやって下さい。
(池ヶ谷正志)