でっきぶらし(News Paper)

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107号(1995年09月)8ページ

あらかると 「ブチクスクスの子 すくすく成長」

 パプアニューギニアと聞いただけで、何か神秘的な雰囲気が漂います。それもその筈、日本よりはるか遠くに、オーストラリアのすぐそばにある緑がいっぱいに溢れた島国なのですから。
 パプアニューギニア展が静岡で開かれたのは、昨年の秋。親善大使としてやってきて、そのまま静岡市に寄贈されたのがブチクスクスです。オーストラリアに近いと述べましたようにブチクスクスも有袋類、カンガルーやコアラと同じ仲間になります。
 夜行性動物館で展示されることになって、私の担当動物の一員に加わったのですが、苦労が増したと言うか、楽しさが増したと言うか、彼らの好物、ヤマモモの葉探しが私の日課のひとつになりました。
 オスとメスの仲もそう悪くなく、採食も適度、日毎に夜行性館の環境に馴染んできていました。予想以上の順調さに安堵していたある日、すっかり暑くなった七月の初めです。メスのお腹を見ていると何やらたるんでいる感じです。子が入っているようでした。
 日いちにち毎にそれは膨らみ、八月に入ると子の体の一部が袋の外へ出て見えるようになりました。
 こうなると関心は、子はオスかメスかです。メスの体に斑点はなく、それはオスのみに現れます。
 八月も下旬になると子は顔を出すようになり、更に九月も半ばになると袋の中から恐る恐る出てくるようになりました。体に斑点はなく、メスのように思えましたが、まだ決めつけるには早すぎます。
 日々の観察は、より楽しさが増してきました。
 子は絶えず変わった行動、仕草を見せるのです。その一挙手一挙足、できるだけ逃がさず観察したいものです。
 そんなある日子は母親の袋の外へ出て、なんとオス親の背中にのっかってしまいました。これにはオス親も驚いたようですが、特に何かするようなことはありませんでした。子の発育は順調、十月十三日にはヤマモモの葉を食べているのも観察できました。動きもいちだんと活発、時々はねて枝を渡ることもあるぐらいです。そうそう言い忘れていたことがひとつ、子はオスでした。体に薄い斑点がついていました。
 ここまでくるとオス親のほうも子をあまり構わなくなり、近くに寄ってもちょっと臭いをかぐ程度です。子の体毛も変化、薄い灰色に黒い黒点がはっきり目立ってきました。
 可愛い盛りを見たいのなら急がれるほうがよいでしょう。親子のむつまじさも、だいぶ見られなくなっています。
(鳥羽勲)

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