110号(1996年03月)5ページ
動物の仕草あれこれ?V(草食獣編)【フレーメン】
「やだあ、汚い。オシッコ飲んでる。」草食獣のこの仕草にいきなり出会った方は驚かれ、衛生観念上汚いとの思いから、受け入れがたい表情もなさいます。しかし「それはちょっと待って下さい。」です。
見方を変えれば、私達は自らの排泄物を無用なものとして扱い過ぎているきらいがあるのです。自らの排泄物を大事に扱う動物は思いの外多くいるものです。
先に述べたカモシカは、ためグソをします。つまり自分のウンコは一ヶ所に集中的にするのです。意味はなわばりの占有宣言です。俺の大事な場所だからと、他のカモシカに近づかないよう警告しているのです。
キツネザルの仲間にも面白いのがいて、オスがメスを自分のものにすると、これも占有宣言と言っていいでしょう。メスの体に自分のオシッコをかけて“においづけ”してしまうのがいるそうです。
端的な例ですが、ウンコ、オシッコが単なる排泄物でない意味合いがお分かり頂けたでしょうか。もっとも、“におい”の世界に生きてない私達にとって、理性ではともかく感情的には受け入れ難いでしょう。
さて、それでは、草食獣は何でオシッコを飲んだりするのでしょう。おいしいから?あるいはミネラルを補給する為?この行為は、オスがメスのを飲んでいるところに注目する必要があります。
オスが恋の時期を待っているのです。メスの準備O.Kを待っているのです。メスのオシッコを飲んだ後、上くちびるを鼻先につけるようにして天を仰ぎます。「フレーメン」と言い、においをよりしっかりかぎ取ろうとする仕草です。
そこに“受け入れ態勢O.K”のサインが出ていれば、脳波にバシッです。今まで、比較的穏やかだったオスの態度が急変します。メスに無心に一心に突進してゆきます。