でっきぶらし(News Paper)

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72号(1989年11月)8ページ

あらかると【ヒイロニシキヘビの反抗期】

 一九八八年九月六日、七十五日目に四頭フ化したヒイロニシキヘビは、日本の動物園では初めてで、体重は約七十g、体長四十cm程の大きさでした。
 両親は、一九八七年三月に来園しましたが、非常に気が荒く、ヘビ舎の扉をあけて、のぞみこむ時を狙って、顔や手にとびかかってくる始末で、危険きわまりないヘビ達でした。
 しかし日がたつにつれ、警戒心も薄紙をはぐように少なくなり、♂は約三ヶ月目に、♀も約五ヶ月目にようやく餌を食べました。その後は順調に食欲も増し、栄養状態もよく、今回の産卵、フ化にむすびつきました。
 普通フ化した後の子ヘビは性格もきつく、攻撃的です。ところが、ヒイロニシキヘビの子はどうしたのか、非常におとなしく触っても、持ち上げても全然平気でものたりない気分でした。
 餌付きも簡単でしたが、秘めた警戒心はあるようで、与えた餌も夜間に食べています。子ヘビでも比較的大きいので、最初から生後三週目のマウスでも平気で食べていました。
 その後順調に成育していたのですが、一九八九年二月二十五日に共食いによる事故で、一番小さな個体が死亡してしまいました。それからは残り三頭を別々に飼育しており、毎月一回体重、体長を計測しています。
 不思議なことはまだあります。このヘビは脱皮が三ヶ月に一度ぐらいしか見られないのです。他のヘビはフ化してまもなく脱皮し、以後何回も脱皮を繰り返します。ヒイロニシキヘビのように少ない脱皮にもかかわらず成長するのが神秘的です。
 フ化後一年経過した時点で、体重も十倍に成長しましたが、その頃より少し荒い性格になり、時々攻撃してくるようになりました。親はだんだん人に慣れ、子は成長するにつれ荒くなり、親と反対のパターンとなるおもしろい現象です。この現象は、成長時における反抗期ではないでしょうか。
(後藤昭)

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