117号(1997年05月)6ページ
からかると 「類人猿の地震騒動様々」
先日、地震があった時のことです。午後3時頃に揺れを感じ、あれっ地震と思ったら徐々に強くなり、扉がガタガタと音を出し始めるのとチンパンジーが泣き騒ぐのとほぼ同時でした。
揺れが収まってから外へ出てお客様にオランウータンやゴリラの行動を尋ねたところ、お客様は地震があったのが分からなかったようでした。オランウータンやゴリラが急にせわしなく動き始めて、不思議に思っていたようでした。
私にとっていやな予感は、ショックが残って入舎作業が手間取るのではないかということでした。正しくその予感は的中、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、それぞれの個体により入舎時の状況は大別すると4つになりました。
いつもと全く変わらず入室して餌を食べるもの、入室までスムースなもののうろうろ歩きまわり餌に手をつけようとしないもの、部屋に通じる通路まではすぐに来ても何度も往復するもの、全く入舎する意思のないものなどです。時間はかかったものの、おどしたり、おだてたりして何とか入舎させました。その中で心のあやを垣間見せてくれたのは、オランウータンでした。入室すると、餌を2、3個持つとすぐに天井へ、です。ジュンもベリーもで、2頭共そこで餌を食べ始めました。
樹上生活者らしい行動です。木の上の代わりの天井のオリ、地面に体がつかないところが一番安心感を覚えたのでしょう。
しかし類人猿3種とも、地震が発生して揺れを感じて騒ぎ始めるのでは、地震予知にはとても使えそうにありません。そんなところまで、人並みになってほしくはないですね。
(池ヶ谷正志)