118号(1997年07月)6ページ
実習を終えて
マッキー国際学園日本動植物専門学院キーパーゼミ科2年 野村宜志
僕は6月24日から7月10日まで、ここ日本平動物園で実習を行なわせてもらった。ある程度覚悟はしていたが、予想をはるかに超えるほど仕事はきつかった。僕が担当になった動物はライオン、トラ、ゾウなどの猛獣といわれる動物と、タンチョウ、ノガン、フライングケージ、ホンシュウシカなどのおとなしそうに見える動物だった。
これらの動物の部屋を掃除するのだが、これがとても大変な作業だった。ライオン、トラ、ヒョウの部屋の掃除をしている時、横の方からうなり声がしてくるわ、壁を見ると巨大な「くも」が徘徊しているわで、生きた心地がしなかった。またデッキブラシで床をこする際、全力でこすらないと全然汚れが落ちず大変苦労した。そして、おとなしそうに見えたタンチョウ、ホンシュウシカだが一歩彼らのケージの中に入れば、つねに威嚇しまくり、掃除をしていても気が気ではなかった。これだけの作業をしただけで僕はヘトヘトになり、この先続けていけるのか心配になってしまった。
しかし、佐野さん、鈴木さん、長谷川さん、松永さん(他にもまだいますが)達のおかげで立ち直ることができた。特に佐野さん、鈴木さんには本当にお世話になった。大変忙しい中、動物とこの僕の面倒を両方見てくれたのだから、大変お疲れになったと思う。それなのに僕の体の事を気にしてくれて、途中何度も休憩を入れてくださり大変申し訳ないと思う。が、そのおかげで最後まで弱音をはかずに頑張ることができた。(途中2日ほど休んでしまったが)さらに佐野さんに個体識別の方法を教えていただいたおかげで、なんとかゾウのシャンティやダンボの区別がつくようになった。そうなるとおもしろいもので、トラやライオンなどと目が合うと「もっときれいに掃除をしてくれよ。」とか「部屋をきれいにしてくれてありがとう。」などと言われているような気がして、掃除にも一層熱が入った。
僕はここでもう満足していたのだが、他の人たちは違った。動物のことだけでなく、動物を見に来るお客さんのことも思って仕事をしていた。どのようにすればお客さんから動物が見えやすくなるのかとか、お客さんに動物を知ってもらえるのかなど、実に多くのことをあの短い時間の中で考えていた。たった一つのことができていただけで満足していた自分が恥ずかしい。でもそのようなことを知れば知るほど、この仕事にやりがいを感じ、この仕事を好きになるようになった。いつも「ああ、めんどうだなぁ。」と思って学校に行っていたが、実習中は動物園に行くのが楽しみでたまらなかった。しかし楽しいことは長く続かないもので、18日間という短い実習は終わってしまった。当分の間この仕事ができないのかと思うと、とても悲しくなった。まるで好きな女の子にふられた気分だった。
今回18日間という短い期間の実習ではあったが、その内容は実に濃いものだったと思う。いろいろと教わった中で、これだけは胸を張って言えることがある。それは「掃除は飼育において基本中の基本である。」これだけは絶対に忘れないでおこうと思う。
最後になりましたが、何の役にも立てず、そればかりか迷惑ばかりかけていたこの僕に最後の最後まで面倒をみてくださり、本当にありがとうございました。ここで学んだことを生かせるように頑張りたいと思います。