でっきぶらし(News Paper)

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69号(1989年05月)2ページ

フライングの無法者【初代の無法者】

 かって、池のほとりで旺盛な繁殖力を誇ったオオヅルこそ、フライングケージの初代の無法者です。正しくは、こんな言い方をすべきではないでしょうが…。
 本来、草原の相当に広いテリトリーを求め、かつ繁殖力には恐ろしいほど排他的になります。それが多少の広さはあっても限られた場所で営巣すれば、いったいどうなるでしょう。
 正しくというか、西部劇によくある街を力で牛耳る無法者そのものの光景になってしまいます。とすれば、飼育係はさしずめ保安官と相成ります。が、O・K牧場ばりの決闘があった訳ではなく、できる筈もありません。
 いずれも大事な鳥類で、生かし繁殖させることこそ、“使命”です。当時の担当者は、他の鳥類とオオヅルとの狭間で辛い思いをしたでしょう。
 そんな飼育係の辛い思いなど何処吹く風のオオヅルというべきか、ある時の目撃談はひどい。
「俺の目の前をバン?がパアッと飛び立っていったんだよ。それでオオヅルのそばに止まったら、くちばしでぽんとつかまれて石にペンペンペン、それまでだよな。」
 極めつきは、モモイロペリカン殺し。ある日新聞を読むと、タンチョウが巣に近づいた野犬をくちばしの一撃で殺したという話が出ていました。へェー、ツルの一撃というのは凄いものだなあ、オオヅルもタンチョウと大きさは変わらないから、殺傷力も同等がそれ以上だろうなあ、と妙に感じた矢先の出来事でした。
 ペリカンのメスがオオヅルに近づいた時、脳天に強烈な一撃をくらって死んだとの報。御存知かと思いますが、背丈はともかく、体力、性格面ではオオヅルにそうひけは取りません。それ故の強気が災いしたのでしょうが、改めてオオヅルの殺傷能力を強く印象づけられた次第です。
 これではたまらないと、池のほとりの新たな飼育場に移されました。が、これにて一件落着と相成った訳ではありません。

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