でっきぶらし(News Paper)

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97号(1994年01月)7ページ

人工哺育 その個体を追う(その2)★ツチブタ、生きた化石故に

「なんだってねえ、日本平の動物園じゃあ今ちょっと変わったブタの赤ちゃんを大きくしてるって言うじゃないの。あれは、いったいどういうブタかね?」
かつて、赤ちょうちんで気持ちよくイッパイやっている時、私の正体を知る隣の方がいきなりそんな質問をしてきたのです。「あれはブタじゃなくて、アフリカに棲んでいる珍しい生き物だと説明しても、なかなかうまく通じませんでした。
関西弁に変なあるいはおかしなの意でケッタイという方言がありますが、ツチブタは正しくケッタイな生き物です。何百万年前の名残りをそのままにとどめ、かろうじて今の時代を生き続けている生き物です。顔はブタに似ていても、もちろんブタとは縁もゆかりもありません。
そんな生き物です。人工哺育であれ、なんであれ、新しく夜行性動物館を開設されるところではすぐに欲されました。
最初の子は名古屋の東山動植物園に、二番目の子は豊橋の動物園に、大きくなるのを待ち兼ねたようにしてもらわれてゆきました。
彼らも、決して問題がない訳がないでしょう。人に育てられたが故にキーパーが扱い易いのはいいとして(必ずしもそうとは言い切れないが)やっとの思いで連れ合いを見つけたとしても、仲良くなるかには大いに疑問符がつきます。
それでも求められたのは貴重さ故。私の知る限りでは外国の動物園においてもそう繁殖例はなく、日本の動物園においては今まで飼育そのものが少なく、繁殖したのも日本では先にあげた二頭きりです。
今年に入って久しぶりに交尾が確認されました。ひょっとしたら当園で三頭目のおめでたのニュースが、もう少ししてお知らせできるかもしれません。

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