100号(1994年07月)3ページ
「でっきぶらし」百号記念特集 フンボルトペンギンの人工育雛
二羽共に親に任せると死亡する確立が高いとのことで、一羽を取り上げました。その時点での体重は一一〇g、二ヶ月以上経った現在は四一〇〇gにもなっています。
餌の与え方は、コアジを内臓と共に細かく切ってたたき、泥状にして注射器で与えます。前々担当者が考案し成功した方法ですが、私自身は初めてでしたので無事に育ってくれるか心配でした。
取り上げた直後の一週間は一日四回、その後は一日に三回、先に述べたのを与えていましたが、最近では背びれ、腹びれ、尾びれを切り除いたコアジをそのまま与えています。
給餌に要する時間も、日が経つに従って短くなっています。あと数日で給餌回数も一日二回に減らせられるでしょう。
体つきもしっかり、首を上げるのも精一杯だったのが、ペンギン独特の風格さえ感じられるようになっているのです。違うのは、成鳥に比べて淡い羽根の色だけです。
フンボルトペンギンを育てて感じたのは、人に甘えかつ寂しがり愛撫を求める仕種はとても鳥の仲間とは思えず、まるで哺乳類のようであったことです。
(川村敏朗)(「でっきぶらし」7号より要旨抜粋)