100号(1994年07月)6ページ
「でっきぶらし」百号記念特集 ベンガルヤマネコの人工哺育
予定通り出産し、最初は面倒を見ていましたが、折からの落雷に停電が重なりより不安をあおった為か、親は育児を放棄してしまいました。出産箱に落下防止のベニヤ板を取りつけたりしたのですが、効果はなかったようです。
オスはベン、メスはガールと名付けた子を動物病院で早速哺乳を始めました。でも、飲む量はわずか一cc程度です。
日が経つにつれメスの方は飲むコツを覚えたのか、満腹になるまで一気に飲むようになりました。そのまま手の中でぐたっ、スースー眠ってしまうことさえありました。
オスは対象的に飲み方が下手で、チューチュー力強く吸う割にはミルクの量は減ってゆかず、空気も一緒に吸い込んでしまって少しの量で満腹になってしまうようでした。
その為にメスの体重はどんどん増えてゆくのに対してオスは少しずつしか増えてゆかないので、その差は開くばかりでした。
それだけでも心配なのに、オスは生後二週間ぐらいからの十日間体重が増えなくなり、かつ下痢気味になって血便までする始末でした。毛づやも落ち、顔や肛門付近の汚れも目立つようになりました。もう駄目かなと思いつつも、ひたすら哺乳を続けてゆきました。
体重が増えてきた時は嬉しく、毛づやや体の汚れもいっぺんに取れた感じでした。こうなると哺乳も楽で、もうため息が出ることもなくなりました。
生後一ヶ月の体重は、オスが150g、メス204gでした。この頃になると動きも素早く身軽で、ジャンプしたり走ったりして、ゼンマイ仕掛けのぬいぐるみのような可愛らしさです。
まだどこかしっかりしていない足取りで私の後をついてくる様子は更に愛らしく、担当者の役割の気分を味わっています。
離乳作業は順調に進み、五〜六回の哺乳も今は二回に、離乳食の馬肉の切身もおいしそうに食べるようになっています。が、まだ安心ではありません。まだまだ大事に見守ってゆく必要があります。
(川村敏朗)(「でっきぶらし」29号要旨抜粋)