100号(1994年07月)10ページ
「でっきぶらし」百号記念特集 後日談・八度目の正直
過去の七回は全て失敗。育児放棄の常習犯が八回目にしてやっと子の面倒を見るようになりました。
初産の時は、子を見たとたんびっくりして声にならぬ声をあげて逃走。それでも徐々にながらも、回数を経るに従って多少の成長はありました。子を舐めるぐらいのことはするようになったのです。
更には、子の体が乾き立ち上がるようになるまでは、一緒にいるようになりました。カメのような歩みの進歩ながら、前々回辺りよりこれはもしかしたら、そこはかとない期待を抱かせてはいました。
と思いつつも、八回目の出産予定日が近づくにつれ、どうせ育てっこないとの気持ちにどんどん傾いてゆきました。大きなお腹を見るにつけ、人工哺育するこっちの身にもなれ、と言いたくなるぐらいにです。
出産したのは、私が休日の時。で、その翌日部屋の中で座っている子を抱き上げると、今までと違って全身に力がみなぎっている感じでした。これはミルクを飲んでいる!!と確信できました。
外へ放してやると、走り出して運動の隅へ。すると、親がすうっと近寄って体やお尻を舐め回した後ミルクを与えました。今までが、全くウソのようです。
それにしても、人工哺育で育ったのならいざ知らず、母親に育てられたのに子育てをしないなんて予想だにしないことでした。これも、動物園で飼育されている為のひずみでしょうか。
(池ヶ谷正志)(第77号・「あらかると」より要旨抜粋)