でっきぶらし(News Paper)

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56号(1987年03月)6ページ

動物の食べ物 第六回【レッサ―パンダ】

 ジャイアントパンダの人気のあおりか、本来持っている可愛らしさと相まって、けっこう人気を博している動物のひとつではあります。中華人民共和国からの“親善大使”である為、死んだ場合も発表されるのですが、それは思う以上に行き渡るようで、訃報後かなりたっても、お客様の会話の中からそんなことが聞くともなしに耳に入ってきます。これも、人気のある証明でしょうか。
 寿命は十年と思いの他短かく、老齢で弱り容態が芳しくないと伝えられたのは、昨年の暮のこと。程なく私がそのレッサ―パンダの唐々(タンタン)に会ったのは、病院の解剖台の上でした。遂に寿命の尽きた「屍」がそこに横たわっていました。
 記録係のピンチヒッターとして、解剖の様子を撮り続けたのですが、これが内臓の満身創瘁か、老いて死ぬと内臓はこんなになってしまうのか、と馴じみはほとんどなかったものの、唐唐への哀れさが募るばかりでした。腹水がいっぱいたまっていただけでなく、消化器系以外の内臓はほとんど変色、苦しくせつなかったであろう日々を改めて思い起こさせました。
 でも、容態が思わしくないと聞いてから、こうなるまでにかなりの間がありました。その間歯槽膿漏もかなりひどかっただけに、特に竹の葉などはどうやって与えていたのだろう、と疑問に思わざるを得ませんでした。
 それも、ほどなく納得。隣の担当者の苦労させられたよな、から始まった話を聞いていると、竹の葉をミキサーにかけてバラバラにし、リンゴバナナやミカンの上にかけて与えたというのです。喰いはよくなかったようですが、それでも消化器系はまだ幾分他の器官と比べ丈夫だったので、しばらく持ちこたえられたようです。
 彼等が健康な時に食べるものは、意外と多彩です。リンゴ、ミカン、バナナの果実類を初めイモ、ニンジン、トマト、ハチミツ、更にはミルクからオートミール、タマゴに三日に一度のヒヨコまで、その数は実に十三種にも及びます。これとは別の竹の葉が、いつでも食べられるように彼等の周囲に置いてあります。
 レッサ―パンダって何の仲間だっけ?そんな疑問が湧かれたでしょうか。竹の葉が主食のひとつであることで、ジャイアントパンダの仲間であることはすぐお分かり頂けたでしょう。では、もっと広く大きく捕らえれば何の仲間に属するのでしょうか。食肉目、トラやイヌやクマ、アライグマ、そういった動物がいるところに分類されます。そう、少なからず肉類を主食とするグループの一員であるのです。だとするなら、竹の葉が主食のひとつでかなり植物食が強いことは、かなり特異な存在ですらあります。
 餌をさりげなく書いていて「ヒヨコ」が出てきたのでかなり驚かれた方もいたでしょうか。でも、食肉獣であることを唐ワえればあの程度でよいのは、動物食に対する嗜好はむしろ大きく後退しているぐらいです。

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