でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 139号の5ページへ139号の7ページへ »

139号(2001年01月)6ページ

〜病院だより〜 勉強になります動物病院

 突然ですが、皆さんは記念すべき21世紀の始まりはどうでしたでしょうか?私はと言いますと新年早々から「担当替え」となり、慌ただしい新世紀の始まりとなりました。
  その担当替え先はと言いますと、なんと「動物病院」!!そしてまた聞いて驚いたのが動物達の種類や数がなにしろ多いのなんの!!ざっと数にして47種75点の動物達があの建物の中にひしめき合っているのです。まぁ 、言ってみればちょっとした動物園のようなものです。しかも、その半分位がケガをしたり体の調子が悪い動物達ばかりなのです。まだ飼育経験の浅い自分にとって果して動物病院での仕事が勤まるのかどうか不安でしたが、そうこうしているうちに動物病院での飼育業務がスタートしていったのです。

 思い起こせばまだ記憶も新しい今年の1月4日、朝6時。朝といってもまだ外は真っ暗で冬の寒空には星が煌々と輝いており、まだ夜中といってもいいぐらいです。動物園に向かう車の中で、約4年前に飼育員となって初めて出勤する時のあの心地よいドキドキ・ワクワクとした緊張感が蘇ってきてます。まあ 、そんな心境の中、肝心な仕事の方はといいますと、これまた大変!!覚えることがたくさんあり、また不慣れなため時間がかかりてんてこ舞いです。しかもここは動物病院なので、当然ケガを負ったり具合の悪い動物たちがいます。その大半が野生動物達(主に野鳥など保護された動物達)なのです。そのような傷ついたり弱った鳥たちが毎日とは言いませんが、2日にいっぺんぐらいのペースで多い日には3〜4羽もの保護されます。何かの事故で翼が骨折していたり、餌が捕れなくてガリガリにやせ細って衰弱していたりと様々です。このことから、今さら言うまでもなく環境破壊が急速に進み、動物達の棲む場所が激減、激変していているということが保護されたその痛々しい姿の動物達からも無言のメッセ−ジとして伝わってきます。そして、驚いたことに新聞やテレビなどのニュースでもたびたび耳にするあの「オオタカ」などの猛禽類がケガをして保護されるのにはショックを受けました。緑多き静岡県においても、悲しいかな環境破壊の波が押し寄せているのです。また今年は、例年になく日本の東北や北海道以北にしかいない珍しい海鳥の仲間達の保護もあいつでおり、やはり地球レベルで環境が激変していることがわかります。まあ 、話はちょっと大げさ過ぎてしまったようですが、動物病院に来てすぐに野生動物達がおかれている現状を実感する事ができました。

 そんな傷ついたり弱った動物達もすぐに回復してくれれば良いのですが、なかなかそうもいきません。入院となると当分の間は病院暮らしになるのですが、元々野生の動物達ですから当然人間には慣れていません。だからその世話も一筋縄ではいかないのです。餌を与えても食べてくれないこともあるので、さし餌(口の中に餌を入れて与えること)をしなければなりません。しかし、このさし餌がひと苦労なのです。モタモタしているとバタバタと暴れたり、嘴で攻撃してくるので一瞬の隙を見つけて素早く嘴を捕まえて給餌をするのです。でも手を嘴で咬まれたりして痛い思いをしても、その鳥達を無事自然に放し大空を気持ち良さそうに飛んでいく様を見ると本当に清々しい気持ちになります。しかし、その反面、病気やケガが治らず死んでいく動物たちもいます。保護されて直ぐに息絶えてしまうものやしばらく入院して調子が良くなって喜んだ次の日には亡くなっていたりと、一喜一憂する日が多いのも現状です。そんな時は飼育員として、自分の力不足に虚しさを感じ、また動物の命とは、何とはかなく、そして尊いものなのだろうかと痛感しました。そのようなことから、今この目の前で一生懸命に生きている動物達に対して、こちらも一生懸命になって世話をすることが、飼育員としての義務であり誇りでもあるということを思い知らされ、メンタルな部分での経験をすることができました。

 その他にも飼育に関しての実用的な事も学ことができました。特に動物病院では動物達を飼育管理する場合に、時として捕獲、保定をして治療や給餌をすることが往々にしてあります。これら捕獲の方法や保定時の力加減などは、やはり実際に経験して体で覚えなければなりませんので大変勉強になります。また、多種多様な動物がいますのでそれら動物達の餌作りや給餌方法なども勉強になります。このほかにも勉強になることがまだまだたくさんありました。そこで以前、私が動物病院に担当替えと決まった時に、諸先輩方が「病院はいろいろな意味で勉強になる!!」と言っていたことを思い出し、その言葉はまさにその通りだと実感しました。

 短い期間でしたが、自分にとってこの動物病院での経験や知識は飼育員として今後貴重な財産になることは間違いないでしょう。また、いろいろな知識やアドバイスを授けてくださった動物病院の諸先輩方に感謝したいと思います。
 そして、最後に動物病院のたくさんの動物達に一言。
  「ありがとうございました。」
(花崎 貴行)

« 139号の5ページへ139号の7ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ