39号(1984年06月)5ページ
昭和58年度 動物園の1年 後編 12月
オオアリクイの下痢・チンパンジー、リッキーの風邪他
寒くなって一番なくなるのが、出産のニュースです。先月11月はなく、12月もわずかに2例。その内のナマケグマは“残骸”のみで、ワオキツネザルのほうだけが無事に育ってくれました。
リフトの上は別世界。そうあってはならないのですが、最も足の向きにくい場所のひとつです。飼育されている動物のほとんどがハ虫類であるために、そうなってしまうのでしょうが、あまり感心した話ではありません。
そこで飼育されている唯一の哺乳類が、オオアリクイです。先月号では、突然倒れた時の話を書きましたが、今度は下痢。メスがお腹を下し、どんな薬を与えても治らず、獣医は頭を抱え込んでしまいました。
便も通常の色とは、全く違う灰色となり、いよいよ方策も尽きようとする中で、快方に向かい出したのは、担当者のちょっとした閃きでした。正露丸が効くのでは、と餌の中に混ぜて与えれば、バッチシ効果抜群。見事に下痢は止まりました。
南米産の動物には、生態や形態に特異な動物が多いのですが、ちょっとした病気にこれ程悩まされるとは、獣医も担当者も思いもよらなかったでしょう。
この月、ハ虫類館では、舌を思わず噛みそうな名のトカゲ、ミドリバシリスクとマダラバシリスクの飼育が試みられました。
寒くなってかぜをひき易くなるのは、人ばかりではありません。動物だって、特に人に近い類人猿の子は要注意です。
動物病院の一室で人工哺育され始めて、もう10ヶ月も経ったチンパンジーのリッキー、この動物もよく私たちを悩ませてくれます。ミルクの吸いつきはよかったものの、離乳期に下痢が長引き、固形物を思うように与えられずずいぶん苦労しました。そうしてようやく離乳させたと思えば、今度は風邪です。餌を食べずにぐったりしているので、熱を計れば軽く40度を越えていたというのです。
風邪との戦いは、12月ばかりでなく、冬の間中続きました。リッキーもそのうち熱に強くなって、38〜39度くらいでは元気に動き回っていたそうです。何の動物であれ、育てあげるまでには幾つもの苦労が伴います。
他、この月には、待望のタンチョウの飼育が始まったことや、人工哺育にしたトラの子の白内障が顕著に表われた悩み等がありました。