でっきぶらし(News Paper)

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45号(1985年06月)8ページ

動物園の1年 後編 3月

春の兆し・オランウータン・ジュンとチンパンジー・リッキーの風邪他
 
 朝夕、さほど冷え込まなくなり、1日ごとに春が深まってくるのを感じさせてくれるのが3月です。動物もそれをしっかり感じているかのように、出産の兆しをあちこちで見せ始めます。
 4日にアキシスジカが―。これはカラスによって惨殺。母親が見殺しにした結果です。子を舐めた形跡すらありませんでした。10日に産まれたワオキツネザル、これは賑やかな家族になっています。母親もベテランになって、実に堂々たるものです。他にアルマジロの死産、バーバリシープ3頭のメスが次々に出産―。6頭のうち3頭しか育たなかったのですが、それでも放飼場はもう満杯の感じです。担当者のうれしいよりうんざりした顔が浮かんできそう―。
 この月、地味で目立たないながらも、開園以来であった鳥類3種類が相次いで逝きました。15日はショウジョウトキが、18日にはオオバン、アカコンゴウインコが・・・。1984年度において、開園以来の動物の死は7種類、2頭5羽に及びました。
 締め括りは、チンパンジー・リッキーとオランウータン・ジュンの風邪。ふだん仲がよい分だけ、風邪も仲よくひいてくれました。ほぼ3週間に渡って、グシュングシュン。熱を出してウンウン。担当者ことこの私をすっかり不安と焦燥をるつぼに陥れてくれました。
 この2頭も間もなくお別れ。このでっきぶらしが皆様のお手元に届く頃には、ジュンにお嫁さんがきていて、リッキーは大阪市天王寺動物園に行っているでしょう。
(松下憲行)

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