でっきぶらし(News Paper)

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101号(1994年09月)4ページ

あらかると カムイの明日を待つ日々

 チンパンジーのオス、カムイ(5才)が来園して早一年になろうとしています。名前からお気付きの方もいるかと思いますが、北海道の札幌市円山動物園より来たのです。カムイとは、アイヌ語で神の意だそうです。
 病院で検疫を終えた後に、類人猿舎の先住者のパンジー親子と見合い。が、手荒い歓迎のあいさつを受けて心身共に痛手を負い、しばらくはパンジーの顔色をうかがいながらおどおどしながら生活していました。
 と言いながらも、体の傷が治るのに合わせ心の傷も癒えてきたら、本来の彼の性格が表へ出てきました。広い北海道育ちらしくおおらかで、飼育係に対しても大変素直で、代番者の私にも別け隔てなく接してくれている気がします。
 類人猿舎に来たばかりの頃でも、夕方にミルクやヨーグルトを持って部屋の前で名前を呼んでもすぐには来なかったものの、じっと待っていれば食べてくれました。
 意地悪な個体は、隙を狙って手を引っ張ろうとしたり、ヨーグルトを食べさせようとするとそのままスプーンをくわえて持っていったり、ミルクを飲んだふりをしてそれをひっかけたりと、こちらを認めるまでいろんな意地悪いいたずらに泣かされるものです。
 カムイは最初からそんなことはせず、ミルク、ヨーグルトを与えている時は自由に体を触ることさえさせてくれました。代番の私にとっては精神的に大変楽な個体でした。 
 彼の来園の理由は、パンジーの娘ピーチ(5才)のところへの婿入りです。が、ピーチはまだパンジーについているので、同居してはおりません。
 今はまだパンジーが取り仕切っているので、パンジーが完全に彼を認め、かつ心身共にそれ相当に耐えられるようになるまで、ピーチとの同居は待つしかないでしょう。
(池ヶ谷正志)

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