でっきぶらし(News Paper)

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60号(1987年11月)9ページ

動物の食べ物 第9回 夜行性動物館その2

 アフリカタテガミヤマアラシ、これはこれでまた何かに似て、先程のべたハリネズミの親玉のような感じですが、これもまた何の縁もゆかりもありません。第一、食べる物が違います。ヤマアラシはげっ歯目に属し、植物食の動物です。こうして縁もゆかりもない動物どうしが、我が身を守る方法に共通点なんて、動物の持つ面白さや不思議さを改めて垣間見る思いです。
 このヤマアラシ、飼育する側にはややもすれば嫌われ勝ちになります。というのも、しばしばとんでもないことをしでかすからです。かつては旧館においても飼育されていたこともあったのですが、何たって何でもかんでもかじくらなくちゃ気が済まない悪い?習性の持ち主。餌のイモやニンジンやキャベツ、リンゴにだけでは収まらずに、遂には扉までかじり始め、小獣舎が新設されると早々と追放された経緯があるくらいです。
 御存知かと思いますが、ヤマアラシに限らずげっ歯類の歯は一生のび続けます。それが絶えず歯ごたえのあるものをかじらずにはいられない衝動にかられているようです。新館においても、その辺を充分に承知しながら、またも扉をかじられました。その為に室内にはかじる為の丸太を置き、扉には金属を覆い、丈夫にしたにもかかわらずです。動物の持っている底力や衝動は、私達が想像する以上です。
 ところで、毛が変化したものといわれる背中一面の針の効用を考えられたことがありますか。怒らせると見事なほどに開花?させ、それでもなおかつ逃げないとなると、そのままぶつかって来る仕草を見せます。
 それが恐いのです。その攻撃をまともに受けると、トラでも死ぬといわれています。もっとも当園のはアフリカ産ですから、森林地帯等に棲息していることを考えると、さしずめ天敵はヒョウでしょうか。
 食べる為でなく食べられない為の工夫、自然はそれぞれの動物に実に味のある妙を与えています。

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