61号(1988年01月)3ページ
レンズから見た動物達「無理な注文だよ」
「ZOOしずおか」の編集部より、これはちょっと無理じゃあないかと思われる撮影依頼を受けることがあります。今回も夜行性動物館のベンガルヤマネコの親子の写真を一枚と言われた時、その不安が頭をよぎりました。
「ちょっときつい注文だよ。」と編集部と出かけましたが、いざ撮影を開始すると思った通りの展開。ガラスにピッタリとくっつけたレンズや私の顔に子供がじゃれてきて、とてもシャッターを押すチャンスがありません。
1時間半も経った頃でしょうか。親子共に巣穴に入ってしまいました。これをむしろチャンスと考え、巣穴から出てくるところを撮ろうと思いました。が、親が出て更に子が上半身を出した時にシャッターを押したものの、その瞬間に親が動いてしまい・・・。
見事に失敗。子はしっかり撮りながらも親はお尻だけだったのです。以後、親子で一緒にいるところを撮るチャンスはなく、せめて子供同士がじゃれ合っているところをと思ったのですが、これも駄目でした。
夜行性館は薄暗く、ピントを合わせるのが大変です。最後は仕方なく、遊び疲れて1頭が擬木の上で横になったところを撮りました。結果はボツ。全くの写折損でした。ちなみにある新聞に出たベンガルヤマネコの写真も、擬木の上で1頭ポツンと座っていました。きっと私と同じような思いをしたのでは―。
(池ヶ谷正志)