でっきぶらし(News Paper)

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280号(2024年12月)5ページ

賢さ十分!ひねくれ満点!

 ゾウは賢くて、繊細で、感情豊かな動物です。ゾウを担当して3年目になりますが、日々ゾウという動物の魅力に気付かされます。特に当園で飼育しているアジアゾウの「ダンボ(メス)」は感情表現が豊かで面白いと感じます。担当になったばかりの頃、ダンボはトレーニングもできないくらいの性格だと聞かされていました。たしかに、エサの準備が遅ければ足を踏み鳴らし、気に入らないお客様がいれば水や泥を投げ飛ばす…暴れん坊という言葉がピッタリなゾウでした。そんな絶妙にひねくれた性格に仲間意識を感じたのか、すぐに私はダンボを好きになりました。それと同時にこうも思いました。「なんか色々分かったうえでやっているな、こやつ」と。エサの準備中に足を踏み鳴らせば、飼育員たちはそそくさと切り上げ、いつもより早くエサにありつくことができます。気に入らないお客様に水や泥を投げ飛ばせば、お客様は離れていきます。好きなもの(エサ)を早く手に入れ、嫌なもの(気に入らないお客様)を遠ざけるということを自分の身体を使って精一杯やっているのです。ちなみに気に入らないお客様はダンボのその日の気分によって変わります。ダンボが水や泥を鼻で吸い上げていたら急いで逃げてくださいね。

 そんなダンボの賢さは、トレーニングでも発揮されました。当園は元々”直接飼育”といってゾウと同じ空間に入って飼育管理を行う方法でした。しかしダンボは数十年前に飼育員に対する攻撃的な行動が見られたため、30年以上トレーニングを通じたケアができていませんでした。そこでもう1頭いた「シャンティ(メス)」の死後、シャンティの部屋を改修して格子をつけ、飼育員の安全を考慮したトレーニングルームとしました。長年トレーニングを中断していたため飼育員は不安いっぱいでしたが、その不安とは裏腹にダンボはメキメキとトレーニングを覚えていきました。わずか数か月で前脚、後ろ脚のケアができるようになり、今年の9月には採血にも成功しました。担当者としては、感無量です。

 しかしここ最近はダンボの様子に変化がありました。トレーニング中に排水溝に溜まった水を鼻で吸い上げ、壁に向かって投げ飛ばすようになったのです。トレーニングルーム完成前に放飼場でトレーニングを行っていた時も度々みられた行動で、こうなると飼育員は手も足も出ません。このような攻撃っぽい行動は「要求・回避・自己刺激・注目」を目的として行われることが多く、先にあげたエサの催促やお客様への水飛ばしのようにダンボの場合は要求や回避として行われることが多いです。特定の号令で水を飛ばすことから”イヤダ!コレ、ヤリタクナイ!”というアピールをしていると考えられます。ダンボの要求を叶えてあげたい反面、健康管理に必要な処置ができなくなるのは困ります。そこで今では難易度を下げるなどして試行錯誤しながらトレーニングを行っています。3歩進んで2歩下がったような気持ちですが、ダンボに”トレーニング!タノシイ!”と思ってもらえる日がくると信じて精進していきます。

(藤森)

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