でっきぶらし(News Paper)

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29号(1982年09月)5ページ

近況 〜フロリダキングスネークの孵化と餌付け〜日本の動物園で初めての

(後藤 昭)
昭和57年6月3日、ハ虫類館の展示室でフロリダキングスネークが、8個産卵しました。その日より数えて、44日目の7月17日に3頭、18日に2頭、19日に2頭、計7頭のすばらしく、きれいな可愛い赤ちゃんヘビが誕生しました。
大きさは、約30cm、体長30g〜35gで、色は全体に黒っぽく、その中に黄色の横じまと、所々に赤い斑点が入っており父親に似ている感じです。ヘビの卵の孵化は、アオダイショウ、ヤマカガシなどで何回か成功していましたので、あまり心配しませんでした。
産卵した卵を上下逆さにしない様注意深く、孵化のため準備してあった容器にそっと移しました。この容器は小さなポリバケツの底に水ごけを入れ、その上に消毒した土を入れて、水ごけも土も全体に水でしめらせ、卵を並べました。そしてビニールシートでおおい、数ヶ所に小さな穴をあけ、多少の空気が通る様にして、温度が30度ぐらいになる場所に置いて孵化を待ちました。卵は、アリ、ゴキブリ、それに土に細菌があると腐敗の原因になるので、毎日注意していましたが、1個だけ残念なことに腐敗してしまいましたが、7個は順調に育ち誕生することができました。
トカゲの卵は中の子供の成長と共に卵が大きくなり驚いたことがありましたが、ヘビの場合は、あまり変化がない様でした。
野生動物は本能的に用心深いものですが、このヘビの赤ちゃん達も警戒心がとても強く、卵から頭が出ているのをみつけてから誕生するまでに、8時間もかかりました。孵化当日の朝、卵より頭が出ているのをみつけたので、記録に残すためにカメラを向けるとひっこんでしまい出ようとしませんでしたが、根気比べに疲れたのか、夕方になって、卵から出てくる様子をおさめることができました。出るなり尾を振り、頭を上げて攻撃してきましたが、1ヶ月もたたないうちには、すっかり馴れておとなしくなりました。
孵化の成功で1段階は過ぎましたが、次は餌付けを考えなければなりません。第1回の脱皮が終わった後で良いのですが、脱皮は3日目位から始まり、約1週間位で終了しました。ヘビの餌付けをするのには、生きた餌しかたべませんので大変苦労します。今回は、生まれたばかりのマウスの仔(ピンクマウス)を与えましたが、大きすぎて食べられません。もっと小さなピンクマウスでなければと考え込んでしまいましたが、1腹で10頭生まれたピンクマウスは小さいので与えたところ、何頭かの赤ちゃんヘビが食べてくれました。しかし、マウスがこちらの希望どうり仔を産んでくれないので困ります。それでも、4頭は完全に餌付き成長していいます。
このヘビの種類では、日本の動物園では今回の孵化(繁殖)が初めてですので、なんとか順調に育てて、2世、3世を産ませたいものです。

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