でっきぶらし(News Paper)

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32号(1983年03月)4ページ

ぼくリッキー 人工哺育中です

(小野田祐典)
僕はチンパンジーのリッキーです。
2月8日の夜9時34分に生まれ、今は動物病院の人間用保育器の中にいます。保育器の中の温度は28〜29度、湿度は60パーセントぐらいで、ちょっとせまいけど、僕は寝てばかりいるので快適なところです。
母親は、僕が生まれた時に抱っこしてくれましたが、抱き方がへたで、どうして育ててよいのか知らないらしく、僕を台の上にあおむけにおいたり、上に乗ろうとしたので、飼育係のおじさんが、9日の午後5時に取り上げて育ててくれています。
動物病院につれてこられてからすぐに、体重をはかってくれましたが、2030gもありました。飼育係のおじさん達は、こんなに大きなチンパンジーの赤ちゃんがあるのかと、本を引っ張り出しては調べていましたが、どの本を見ても2000g以上の記録は報告されていないと言って、びっくりしていました。もしかしたら、僕はギネスブックものかもしれないな!
体重は、毎週ハカリに乗せてはかってくれますが、体の大きさや、長さをはかる時に僕が動いたり、“キーキー”とおこるので「とても、これなら正確にはかれないな!」と言って、月1回はかる事にしたそうです。生まれた時の僕の体の大きさは、
頭囲 26.5cm、胸囲 27.6cm、足のうら 5.5cm、手の長さ 25.1cmなどです。
僕は、ミルクを3時間おきに(7時、10時、13時、16時、19時、22時)飲んでいます。飼育係のおじさん達が交代で飲ませてくれますが、10時と16時はおばさんが飲ませてくれます。最初は、人間用のミルクってあまりおいしくなく、1回に10〜15ccぐらいしか飲まなくて、おじさん達を心配させたけど、毎日飲んでいたら好きになってきて、今では(2月28日)70〜80cc以上も一気に飲むようになりました。1日では400cc以上も飲んでいます。
ミルクを飲み終ると、おじさん達は僕を抱きなおしてゲップを出してくれますが、ゲップが出ると、今度はシャックリが出てとまらなくなってしまいます。そうすると、おじさんは僕の頭のてっぺんを手でおさえてくれるので、シャックリがとまります。この方法は、多摩動物公園で人工哺育した時の本「ニイハオ、ユッコちゃん」に書かれていたので、おじさんが僕にもやってみたところ、僕もシャックリがとまりました。
22時にミルクを飲むと、僕は眠くなり、寝てしまいます。保育器の中にバスタオルを敷いて、小さなタオルをマクラがわりし、そしてもう1枚のバスタオルをかけてくれます。ですが、僕達チンパンジーは何かをつかんでいないと安心して眠れないので、かけてくれたバスタオルを手と足で抱くようにして寝ています。
それにしても、翌日の朝7時まではとても長いので、僕は保育器の中で動き回ります。僕って寝ぞうが悪いのかな!その時にウンチをふんだりするので、朝までには体がウンチだらけになったり、全部のタオルを汚してしまいます。そうすると、おじさんは体をお湯でふいてくれますが、あまり汚すので、僕にオシメをすることにしたのです。でもチンパンジー用のオシメなんか売ってないし、オシメカバーなんかも人間用のだと大きすぎて使えません。最初は、タオルをはさんでひもでしばってくれましたが、うまくいかないので、おばさんが昼休みに僕用のヒモ付きオシメを作ってくれました。大きさは、よこ10cm、たて25cm、ヒモの長さ30cmでなかなか良くできていて、これならオシッコやウンチで体やタオルを汚すこともありません。おばさん、ヒモ付きオシメなかなか上手にできているよ、ありがとう!でも、このヒモ付きオシメのおかげで、せんたくものが少なくなって楽するのはおじさんやおばさん達かな!
人間の赤ちゃんもそうですが、動物の赤ちゃんは生まれてから胎便が出ますが、僕の場合には、9日の23時30分に出てから13日の22時の間に4回出ました。それからは毎日飲んでいるミルクのウンチになり、2回ほど良かったのですが、その後は下痢になってしまいました。体重も2030gから1810gまでへってしまい、もとにもどるまでに20日もかかってしまいました。下痢になった日から、獣医さんが下痢止めの薬をミルクの中に入れてくれたおかげでだいぶ良くなってきましたが、軟便になったかと思うとすぐ下痢になったりのくりかえしでした。でも、2月の終わりごろからやっと良いウンチをするようになりました。他の動物園で、僕のように飼育係のおじさん達に育てられた記録ですと暖下剤(下剤の弱い薬)を入れたところもあるので、僕のお腹ってデリケートにできているのかな!
2月の終わりごろから、暖かい日にはおじさんが日光浴につれていってくれるようになりました。まだ時々冷たい風も吹いていますが、おじさんに抱かれて日なたぼっこをしていると、とてもいい気持ちになり、ついうとうとしてしまいます。これからは暖かくなるので、おじさんにたのんで毎日のように日光浴につれていってもらうから、皆さんと園内であった時には『リッキー君、かわいいネ!』と声をかけてほしいな!

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