でっきぶらし(News Paper)

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32号(1983年03月)6ページ

ニシクロシロコロブスの好物はミカンの?

(池ヶ谷正志)
ニシクロシロコロブスはキングコロブスの1亜種で、西アフリカの森林に生息し、木の葉を主食にしているリーフィーター(葉食いサル)の仲間です。
このニシクロシロコロブスは、日本の動物園では当園だけに飼育されているとても珍しいサルで、当園にはペアーで来園しましたが、餌付けがとても難しく、メスは数ヶ月で死亡してしまいました。他にも同じ仲間のコロブスも来園した事がありますが、すべて餌付く事が出来なく、短命に終わっています。
さて、ニシクロシロコロブス、この舌をかみそうな名前のためそそっかしい人は、ニシコロコロブスと、スリムな体型が自慢の彼が怒り出すような読み方をしたりします。しかも、最後のブスの2文字だけを一段と強く読みます。これでは彼もたまったものではありません。これは、最初にこんな名前をつけた人に責任があるかもしれませんが・・・。
そのスリムな身体をささえている1日の餌のメニューを紹介しましょう。ハクサイ、ニンジン、トマト、バナナ、リンゴ、アオナ、煮イモ、パン、卵の黄味、キヌサヤ、ミカンの皮3個分、ダイズとアズキの水でふやかしたもの、カイコのサナギを干したもの、ヤナギとシイの木の葉です。
この中で特窒ニいえば、ミカンの皮でしょう。別に意地悪で皮だけを与えているわけではありません。彼は、実を食べようとしないのです。ミカンのない季節には、グレープフルーツ、オレンジなどですが、これも皮しか食べません。食欲がないとき、他の餌を残す事があっても、ミカンの皮が残っている事はありません。何故こんなにも、ミカンの皮が好きなのでしょうか。多分、何ともいいがたいあの「ニガミ」がいいかも知れません。また、バナナもなかみより皮の方が好きなようで、皮だけ食べてある時があります。
彼は、木の葉を与えないと体の調子がくずれ、軟便、食欲不振になるので健康上必ず毎日与えなければなりません。そこで、園内にあるヤナギの若葉が出てくると与え、他の時はシイの葉を与えているのです。ヤナギの枝を切るのは楽ですが、シイの枝を切るのには木に登っていかなければなりません。特に木の先にある軟らかい葉の方が好きな為、私はノコギリを片手に75kgと高所恐怖症の身をかえりみず、やっとの思いで切ってきます。これも彼が元気で暮らしていくためなら仕方ありません。又、シイの葉を与えると尿が赤黒くなります。これは葉に含まれてている「タンニン」という成分の為といわれていますが、本当に不思議な現象です。おかげで、現在絶好調!
後は彼にお嫁さんを世話し、長いやもめ暮らしから開放してやりたいのですが、この種類のサルはなかなか手に入らず、彼の独身生活はまだまだ続きそうです。

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