でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

33号の2ページへ »

33号(1983年05月)1ページ

獣医実習を終えて 宮崎大学・獣医学専攻 5年 望月綾子

大学での臨床実習のひとつとして、獣医関係の諸機関(開業医や共済など)で実習をしなくてはならないので、私は真っ先に動物園で実習してみようと思った。それは、ふだん対象としている家畜やペットとはちがう野生動物と接してみたかったからである。これまで5年間獣医学を学んできたが、対象として実際に接してきた牛、馬、犬、猫などと、野生動物とではどのような点が違うだろうか。又、動物園での獣医は野生動物をどのように診察し、治療するだろうか。という理由で、私は動物園を選んだ。
期間は3月22日から30日まで、うち一日休んだので8日間の短期間であったが、毎日一生懸命で無我夢中のうちに終わった。獣医実習期間中には、いろいろな出来事がありクロヒョウの断尾手術、出産、解剖、チンパンジーの人工哺育などを経験することができた。
想像してはいたが、家畜やペットと野生動物のちがいに驚き、野生動物に接するむずかしさを少しながら改めて、知ったような気がする。動物に愛情を持って接しても、動物はそれに応えることは少なく、相手は野生を残しているから本能のままに行動するだろう。だから、検査や治療をするには、麻酔をかけたり取り押さえたりしなくてはならない。そのストレスを考えたら、放っておくほうが良いのか、治療に唐ン切るべきなのかという、家畜やペットでは想像もつかない問題があることにあ然とした。そこに最善の治療が思うように行なえないもどかしさがある。動物が、その生命のすべてを人間の手に委ねた時、その動物は本来の野生を失ってしまうのではないだろうか。
短かったけれど、実習を通じて今まで知らなかった獣医の一職場に触れることができ、また、動物に接している飼育係の方々にお話もうかがい、とてもよい経験をすることができた。
実習期間中、親切に指導していただき、たいへんお世話になった動物園職員の皆様に心から感謝しています。

33号の2ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ