でっきぶらし(News Paper)

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33号(1983年05月)4ページ

ゴリラの病気と怪我 (その2) 〜シモヤケとアカギレ〜

(小野田祐典)
北風が吹く寒い冬を迎えると、シモヤケやアカギレなどの凍傷で悩む人も多いが、動物の世界でも同様である。
人間に近いサルの仲間は、アカギレよりもシモヤケにかかりやすく、特に尾の長いヒヒの仲間や尾長ザルが尾の先にシモヤケができやすい。サルもかゆいらしく、最初の頃は尾の先をかいているが、あまりひどくなると、いらいらして、なかには自分の尾の先を咬み切ってしまうものもいる。又、そのシモヤケのところから、切れ落ちてしまい、年々尾が短くなってしまうサルもいる。
これらのシモヤケは、寝室に暖房を入れておくと、ほとんどかかる事はないので、十分設備の整った動物園では、今では解消されている。
類人猿は、尾がないのでシモヤケよりアカギレで悩まされる事が多い。北海道など雪国で飼育されているゴリラは、冬の間、暖房のきいた室内展示場で、暖かくなる春を待つので、ほとんどアカギレができないが、関東以西の動物園では、日中は外の放飼場で飼育されるので、どの動物園でも共通の悩みとなっている。
動物園によって、獣舎の構造はまちまちであり、当園のゴリラの放飼場はオリ式で、床面はすべてコンクリートである。毎年冬になると、寒さと乾燥のためにアカギレができる。アカギレと言うよりもひび割れの状態で、ひどい時には出血したりする。
手の指にもできるが足の裏が特にひどく、片足に4〜5ヶ所できてしまう。痛いらしく、いつもかばいながら歩いているが、特にオスゴリラのゴロンの方が歩き方がおかしく、くせになるのか夏場になってもおかしな歩き方をする。そんなに痛ければ、追いかけっこをしなければよいものを、夢中になり出血しても、痛さを忘れて、毎日遊んでいる。
アカギレができたからといって、そのままにしておくのではなく、予防及び治療として、毎日3〜4回ワセリンを塗っている。ゴリラを台の上に寝ころがせ、ワセリンを塗るのだが、ひどくなったり、痛いところにふれると手でじゃまをしてはいやがる。それでも塗らなければひどくなるので、叱りながらどうにか塗る事ができるが、塗り終わるとまた追いかけっこをするので、なかなか効果がない。
夜間は、温風暖房のため空気が乾燥するので、加湿器を付け、キーパー通路に水を流しておくが、効果がほとんどない。雨の日には、それほど追いかける事もなく、空気も湿っているので、その日だけは、一時的に良くなる。
まだ当園のゴリラは幼いので、私が入室してワセリンを塗る事ができるが、あと4年もすればできなくなってしまう。その時には、追いかけっこもしなくなると思われるので、それほどひどいアカギレにならないと思うが、特効薬があったらぜひ知りたいものである。

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