でっきぶらし(News Paper)

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33号(1983年06月)5ページ

かわいそうなのは おばあさんザル

(小野田祐典)
モンキー舎ぼ一室に、シロガオオマキザルの老夫婦とオスの子供2頭が飼育されています。
このサルは、南米に生息しているオマキザル科に属し、尾にも握力があるので、尾を器用に使うことができます。日本の動物園では、飼育されている園も少なく、貴重なサルで、当園では昭和51年に繁殖賞を受賞しています。
4頭の中のただ1頭のメスザルであるおばあさんザルは、3〜4年前より、今年の冬はもう越せそうもないだろうといわれる程、気力も体力も衰えを見せています。かわいそうな事に、おじいさんザルや子供にあたるオスザルにいじめられる事が多くなり、特に餌の時間には『キーキー』と悲鳴をあげている時があります。夕方、寝室でいじめられても、餌が多くあるのでどうにか食べる事ができますが、朝方放飼場では、リンゴとバナナだけなので、他の3頭のオス達をこわがり、すみの方で座り込んで、他のサルが食べているのを、じっと見ているだけです。
そこで私は、他の3頭が餌を食べているすきを見ては、大きめなバナナを手渡しで与えています。与えたバナナを食べるのを確認するつもりで見ている私に、おばあさんザルは見られるのをいやがって、他の3頭に助けを求めるように『キーキー』となきわめきます。すると、3頭はおばあさんザルのところに寄ってきて、私に向って一緒に攻撃的ななき声をあげるのです。オスザルはこんなどさくさにまぎれて、そのバナナを持っていってしまいます。
『おれに向ってキーキーなくひまがあったら、さっさと食べろ、バカタレ。』
せっかく与えたバナナを、やりたくもないオスザルに渡してしまうので、くやしくてついおばあさんザルにどなってしまうのです。
それにしても、他の3頭もたった1頭のメスであり、母親でもある年老いたおばあさんザルをもっといたわり、一部の人間のまねなどせずに、大事にしてあげられないものでしょうか。

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