でっきぶらし(News Paper)

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34号(1983年08月)6ページ

いじわるなゴロン 〜 ゴリラの代番作業 〜

(池ヶ谷正志)
私がゴリラの代々番になったのは、昭和56年9月1日からです。この時には、オスゴリラのゴロンの体重は51.5kgでしたが、現在では(7月31日)84kgにも成長し、私に対して反抗的な態度が目につくようになってきました。
私が類人猿舎の班員になるように決まってから、かなりひんぱんに類人猿舎を訪れ、接触をはかるためオリごしにゴロンの身体に触ったりしても平気でした。いよいよ、9月1日に類人猿舎の班員として仕事をするようになってから、ゴリラ、チンパンジーに気をくばって接触したのですが、ゴロンは神経質になり軟便が1週間も続きました。その前の班がえの時も同じような事があったと聞き、ゴリラが敏感に感じ取る能力には感心されられました。
そこで、私の顔をおぼえてもらう為と、班員として認めてもらう為に、毎日夕方ゴリラとチンパンジーにヨーグルトとミルクを私が与える事にしました。
チンパンジーとゴリラのメスのトトは、すぐヨーグルトを食べに来てくれて問題はありませんでしたが、ゴロンは知らん顔をして、食べに来ないで私をこまらせました。しかたがないので、担当者に応援を求めることもありました。10日ぐらい過ぎたころより、班員と認めてくれたのか、すぐに寄ってきて食べてくれるようになりました。これだけのことでも飼育係としてはうれしいものです。
ゴロンに半人前だけでも認められた私は、こんどはミルクも与える事にしましたが、好物のためもありスムーズに飲んでくれたのでホッとしました。ところが、ゴロンも成長するに従い、個性ができてきて今年の4月頃より反抗的な態度が見られるようになってきました。担当者をNo.1とするならば、私はNo.3の一番弱い位置にいるので、私に向って態度となって表われてきたのです。まず、ヨーグルトはスムーズに食べてくれますが、大好きなミルクを持っていっても、No.1の担当者がいる時には、名前を呼んでもなかなか飲みに来てくれなくなりました。次のように、ミルクを飲みに来るまでのパターンが、おもしろい事に大体きまっています。
1.ミルクを飲める所にいても、名前を呼ぶと台の上に移動してしまう。
2.夜具に入れてある麻袋で遊びはじめ、夜台を雑布がけする。
3.鉄格子についている餌のカスを指先で、ていねいに取りながら食べる。
4.いつも最後まで残っている白菜を、一口か二口食べる。
5.台の上で背中を私の方に向け立ち、顔だけ私の方に向け、おもむろに尻の穴のまわりを指でかきはじめる。
6.台より降りてきて、麻袋を頭からかぶり上半身を見えなくし、2〜3回オッオッと声を出しながら回転する。
7.麻袋を下に敷き、その上に座って、やっとミルクを飲む。
この間約6〜7分たらずですが、私はミルクを見せながら、ゴロンの名前を呼んでいるわけです。しかし、この反抗的な態度も担当者が休みの日には、コロッと変わり素直なもので、ヨーグルト、ミルク共一声呼べば、すぐ来てスムーズに給餌する事ができます。
ほんとうに、類人猿の代番作業は、私の心を疲れさせます。

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