でっきぶらし(News Paper)

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35号(1983年10月)3ページ

ゴリラの病気と怪我 (その3) 〜 結膜炎 〜

(小野田祐典)
− 昭和56年1月22日 −
いつものように、朝一番トトに“おはよう”と声をかけ、続いてゴロンにも声をかけて通りすぎようとしたが、何となくゴロンの目付きがいつもとちがうのに気がついた。毎日接していると、ちょっとした事でも気になるようになり、またどこか悪いとかならずどこか様子がちがってくる。
よく見ると、右目の囲りに白いものが付いていて、見にくそうに私の方を見ている。いそいで入室し、見ると目ヤニであった。ゴリラの目は、そのまま見ると黒色なので白目が見えない。右目を手で開いて見ると、全体が真赤に充血しており、下まぶたの内側に膜がはったように目ヤニが付いている。
いそいで獣医に連絡して、治療することにした。まず、洗眼剤で目を洗うというのである。ゴロンにこのような事をした事もないし、はたしてゴロンがおとなしくさせるのか不安であった。だが、そのままにしておくわけにもいかず、台の上に正座させた。洗眼する人と受け皿を持つ人と、二人どうしても必要である。まさか、ゴロンに受け皿を持たせて、おとなしくさせておくわけにもいかないので、獣医と私と二人で入室して行なおうとした。だが、ゴロンは担当者でもない人間が入室してくるのをいやがって、怒り「クッ、クッ」と声を出して威嚇している。しかたがないので、獣医に出てもらい、私一人でする事にした。ゴロンの体がぬれても、後からふけば良いと思い、受け皿なしでたれ流す方法で洗眼する事にした。最初はいやがったが、「こうして目を洗わなければ、見えなくなってしまうぞ。」と叱りながら洗っていると、思っていたより抵抗もなく、洗うことができた。が、目を洗う事よりも、体がぬれる事の方がいやのようだった。
それでも、どうにか洗眼も終り、今度は目薬をささなければならない。白目も真赤に充血しているので、目薬をさせばしみるのではないか!はたしておとなしくやらせてくれるだろうか!と、いろいろ思ったりしたが、治療しないわけにもいかない。
動物病院では、かならずしもすべての病気に対する薬を常に用意してあるのではないので、応急手当てとして、市販されている普通の目薬をさしておく事にした。ゴロンをあおむけに寝かせ、右目を指で開け目薬をさすと、思っていたよりも平気で、おとなしくしている。2滴ほどさして、こんどは左目にも予防の為一応さしておいた。
昼間、3回この市販目薬をさしておいたが、いくぶん良いのか、目をこするような事もなく、目ヤニも出すような事はなかった。だが、白目はあいかわらず真赤である。
23日、朝一番でゴロンを見に行った。やはり夜の間にかゆかったのか、さわった後があり、昨日と同じように目の周囲に目ヤニが付いている。入室して、右目を開けると白目も真赤に充血し、下まぶたの内側にも白い膜のような目ヤニが付いている。この日も、市販の目薬で4回治療したが、昼間は右目をさわるような事もなかった。
24日には、代休日だったが、目薬だけをさしに9時30分、13時10分、15時40分と3回出て来て治療をしたが、症状は変化なかった。
24日の夜、好都合な事に私の同級生の眼科医から私用の電話がかかってきた。用件はそっちのけで、さっそく私はこのゴロンの右目の症状を話すと、明日は休診日だし、興味もあるのでぜひ見てみたいと心よく言ってくれた。この同級生は、時々動物園に遊びに来るほど動物好きで、以前に動物園に遊びに来た時、ゴロンが指で目を押さえる行動がみられたので、ついでに見てもらった事もある。
25日、11時頃来てくれた。だが25日の朝から左目にも移り、目ヤニが出ており、白目もピンク色になってきていたのである。なお一層見にくそうである。
眼科医に一緒に入室して、じかに診察してもらうのも危険な為、そういうわけにもいかず、私だけが入室しゴロンを座らせ、おりごしに見てもらう事にした。知らない人がいるという事もあってゴロンは興奮し、いやがったが命令すると、しぶしぶ正座したが落ち着きがない。左右の目を開けて見せると、「結膜炎だな!目薬を持ってきたから、この目薬を2〜3時間おきにさしてごらん。この目薬で治ると思うが、もし1週間つけてみて完治しなければ、こちらの目薬に変えてくれ。」と言って、2種類の目薬までおいていってくれた。
さっそく、ゴロンの左右の目にさす事にした。この目薬もしみないのか平気で、抵抗なく、さす事ができてホットした。定期的に目薬をさしていると、私が入室していくだけで、命令しなくてもゴロンの方から台の上に寝ころがり、目薬をさすのをまっているようになった。
おかげで、26日には目ヤニも少なくなり、白目も赤色からうすいピンク色にかわってきた。夜間もさわるような事もなく、回復に向っているのがはっきりわかり、安心した。27日には、左目が完治し、右目は30日に完治したが、目薬は予防のため2月4日まで続けた。
そして、2ヶ月以上過ぎた4月13日に再び右目から目ヤニを出し、手でさわった後がみられた。前回ほどひどくはなかったが、白目もだいぶ赤く充血している。
だが今回は、同じ目薬を獣医がすぐ用意してくれたので、すぐ前回と同じように2〜3時間おきにさしたところ、それほどひどくならず、16日には完治した。
その後は今日まで、結膜炎になる事はなかったが、ゴロンが成長し、私が入室して目薬をさせなくなった時、このような病気になったら・・・と思うと心細い。ならない事を祈るだけである。
今度、動物園に来た時に、ゴリラの白目が見えるか、じっと見てみて下さい。

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