でっきぶらし(News Paper)

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40号(1984年08月)3ページ

爬虫類館10年 ◎開園以来の爬虫類

 自動扉がスゥーッと開けば、まずワニの池。そこを過ぎて階段を上がると、この館最大の大蛇アミメニシキヘビが、その次にはアカマタが、向かい合っている所にはマタマタをはじめ、カメの展示室、というようにワニ、ヘビ、カメ、トカゲと42種の展示室が屋上に向かって続いています。
 神秘性を漂わせ特異な顔を見せる彼らであるものの、そのいずれもが健康に育ている訳ではありません。開館時と比べれば、ずいぶん“顔”が違っています。拒食を貫き通しての死、トラブルが元での死、あるいはそこそこ飼いながらも寿命が尽きたりがあったりしたてです。
 そんな中で、どれだけ開館以来の爬虫類がいるのでしょう。私が聞き調べた限りでは、19種類います。ここではそんな彼らを、普段の生活ぶりを見ながら紹介したいと思います。

○パラグアイカイマン、メガネカイマン、ハシビロカイマン
 少々のことではまず動こうとはせず、せいぜい目玉をギョロリとさせる程度の彼らも、2週に1度の餌時ともなると、にわかに活気づき、担当者の持ってきた馬肉をめざして我先に扉に押し寄せて行きます。二重、三重に重なりあって、馬肉をバクンバクン、さすがにこの時は迫力満点です。ワニの凄みを充分に満喫させてくれます。
 そうして群がっている10数頭のワニ、区別するのは困難ですが、パラグアイ、メガネ、ハシビロと3種類のワニが入り混じっています。そして、その3種類ともに開館以来です。何かにつけて目立つ彼らは、様々なドラマを綴りながら今日に至っています。
 めでたいほうでは、産卵。人工ふ化で2度、16頭のパラグアイカイマンの子が育てられました。これは日本の園館では初めて(でっきぶらし14号参照)の繁殖でしたから、多少は胸を張れるでしょう。
 頭の痛いこととしては、トラブル。開館以来、寄ると触ると喧嘩することが、最も多いところです。つい最近でも、片足がぶらぶらになり縫合するも失血死(でっきぶらし29号参照)した話を書いたことがあります。過去の日誌をひも解いても、朝が来ると片足が食べられてなくなっていたとか、とにかくそんな驚かされる話が尽きません。今も体に傷を負っている個体が何頭かいます。全くいつになったら仲良くなるのでしょう。
 こんなワニの中に担当者はヒョイヒョイ入って掃除します。私には神技にしか見えません。ともあれ、そんなトラブルを起こした悪い話ばかりでなく、久しぶりにいい話も聞かせてくれればと、そんな願いが涌いてきます。

○ニセコブラ 
 コブラに似ているので、こんな名前がつけられたのでしょう。産地も南米、本物が棲むアジア・アフリカから遠くかけ離れ、かつ無毒で、至っておとなしいヘビです。
 1週に1度、ヒヨコを5〜6羽もらって静かな日々を過ごしています。ただ、時々体のあちこちが化膿することがあるので、それだけは要注意と言うことでした。

○ボールニシキヘビ
 おとなしいと言えば、このヘビもおとなしい部類に入るそうです。もっとも、あまりしつっこく構うと、咬みつきにくることもあるそうです。
 1週に1度、マウスを数匹貰って今日まで大過なく過ごしています。1度、名前のように丸くなるのを見たいと思いますが、それはちょっと無理な注文でしょうか。

○ヒイロニシキヘビ
 たいていのヘビは平気で触る担当者も、このヘビだけは苦手といいます。かんしゃく持ちが多く、中には全く触れない個体もいるからです。「でも、1匹をのぞいて除いては触っちゃうよ。」とは担当者の弁でした。
 生息地、ボルネオやスマトラでは水辺に棲むことから、ここでもすぐに水の中に入るようです。餌は1週に1度、数羽のヒヨコを貰っています。 
 
○コロンビアレインボーボア
 虹色のヘビとは、全く優雅な名を頂いたものです。説明板には、うろこが虹のように輝くと説明してあります。
 ここにいるヘビの仲間の間では、いたって少食の部類に入り、月に1〜2度小さなマウスを5〜6匹与えるだけだそうです。それでもなかなか元気で、丸々よく太っています。まだまだ長生きしてくれるでしょう。

○ボア・キイロアナコンダ 
 正式名は、ボアコンストリクター、舌を噛みそうな名前です。昭和56年度の「動物園の1年」の中で、朝いつものようにドアを開ければ、子供(卵胎性)を産んでいて、親子で入り混じり担当者もいささか驚いた、そんな話を書いたのを思い出して頂けるでしょうか。あれから出産はありませんが、1週に1度、ヒヨコを10羽前後貰って、平穏無事に暮らしています。
 このヘビと同居しているキイロアナコンダも、開園以来です。まあ、生息地が同じ南米と言うこともあって、一緒に飼われているのですが、今までトラブルを起こしたりしたことは1度もありません。そう、どの動物だってむやみやたらな闘争はしないのです。餌は、ボアと同じでヒヨコ。やはり1週に1度のペースで貰い、ふだんは水の中でひっそりと暮らしています。

○マタマタ 
 頭上の突起物で小魚やエビ等をおびき寄せて食べる。この奇妙な形をしたカメ、開館以来らしく背中の甲羅には藻がうっそうと生えています。55年に展示室が設けられるまでは、裏の飼育控室で飼われていました。

○ヌマヨコクビガメ
 首を引っ込めないで、横にして甲羅の中に入れるとは、また奇妙なカメです。餌は小魚を切って貰って、1週に1度くらいのペースで与えられています。全く静かで、目立たずひっそりと暮らしています。
 
○ワニガメ
 なんとまあ、マタマタに負けず劣らず背中の甲羅が見事です。このカメの迫力は、何といってもあごにあります。ひとかみガブリとやられれば、人の指の2〜3本くらいはいとも簡単に取られてしまいそうです。野生では魚が主食で、ここでも1週に1度アジが与えられています。

○ニオイガメ
 捕まえるとジャコウのような臭いを出すとはまたユニークです。開館以来ということで彼らの横顔を探っているのですが、それぞれの形の妙には本当に驚かされます。単に観客だけでなく、私たちにも格好の勉強材料です。餌は1週に1度小魚を切って貰っています。
 
○ミズオオトカゲ
 トカゲの中では、かなり大きな部類に入るのではないでしょうか。のっしのっしと歩き出すと、なかなかの迫力です。名が示すとおり、非常に水の中を好みます。
 野生では、水辺を訪れる小動物を捕らえて暮らしているのでしょう。ここでは、1週に1度ヒヨコやネズミ等が与えられています。こんなトカゲも担当者にかかれば赤子同然。「触ると怒るけれど、そう滅多に咬みつくことはないよ。」と軽い返事でした。

○アンボイナホカケトカゲ
 草食性、そのイメージでもって見るからでしょうか。目つき、表情は非常に穏やかなものを感じさせます。が、担当者は次のようなことを語って、安易な思い込みの恐さを教えてくれます。「図鑑に草食と書いてあって、実際に昆虫を与えると好んで食べるケースは多々あるよ。」とのことです。
 このアンボイナホカケトカゲも、果実や野菜以外に、コオロギも主食として貰っています。そんな図鑑だけに頼らない担当者の探求心が長生きさせているのかもしれません。

○ジョニースナボア
 この他、飼育控え室に当る裏側に飼われている、砂の中に潜るのが好きなヘビ、ジョニースナボアも開館以来です。今はアカマタに展示室を奪われ、いるかいないかわからない存在になってしまいました。 
 体が小さい為に、そう大きなマウスは食べられません。そこで日は決められないで、ピンクマウスといって生まれたての小さなネズミが適当に与えられています。最近はお目にかかったことはありませんが、やせてもおらず元気だと言うことでした。

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