でっきぶらし(News Paper)

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41号(1984年10月)7ページ

爬虫類館10年 その2 ミズオオトカゲの脱走

 もう9年も前の話です。担当者にとっては思い出したくはないでしょうが、もう時効だからいいでしょう。それに、それは仕事上のやむを得ない事情から起こったことなのですから。
 建物の中の飼育で、一番悩ませられるのは、直射日光、紫外線の不足です。どの動物だって、これに当てなければ、健康にいいわけがありません。ある日、いつものように陽気のいい頃、ミズオオトカゲを腕にのせて日光浴をさせていると、腕からスルスル。おとなしく人馴れしていて、習慣づいて安心していたほんの一瞬の隙をついて脱走してしまいました。あれよあれよという間に、茶畑の方へ。そのまま姿を消してしまいました。
 当日、翌日と大捜索にも拘わらず、その行方は依然としてつかめず、とうとうお手上げ。人に危害を加えるようなことはないものの、7〜80センチもの大トカゲといきなり出くわしたら、ちょっと騒ぎが起きるかもしれないと、多少の心配が残りました。
 が、このオオトカゲ、ひょんなことから捕まえることができました。10数日経過して諦めのほうが進行しかかった頃、ダチョウ舎の下の大きな土管からちょこんと顔を出しているのをたまたま通りかかった飼育係が発見したのです。居所さえわかれば、捕まえるのは簡単。土管を両サイドから塞いで、あえなく御用となりました。
 こうして飼育係の思いやりと信頼を裏切ったミズオオトカゲの大脱走は、幕を閉じたのです。ですが、直射日光、紫外線に対する悩みは、そのまま次の担当者にしっかりと引き継がれました。

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